やや黄色味がかったニッケルメッキが渋く輝く【Leitz Hektor 5cmF2.5(L)】、製造は1930年~という事ですので80歳オーバーの超高齢レンズとなります。鏡胴のスレ、ピントノブの汚れ、メッキが薄くなったエッジ部等、外観全体から漂う雰囲気はいかにも『オールドレンズ』といった感で、製造本数が少なく比較的珍しいレンズという背景も相まって興味をそそられる一本です。
早速いつものようにアダプターを介してミラーレスで試し撮りと思ったのですが、せっかく古い雰囲気のあるレンズなので、まずはライカに装着してみようと思い、付けてみたのがライカIIIf・・・
ライカ同士でもっと似合うかと思っていたのですが・・・。このIIIfは1952年、やはり20年のギャップでしょうか・・・。クロームメッキのボディにニッケルメッキの沈胴ヘクトール・・・ややミスマッチかなという印象だったので、いつものように現代のミラーレスに・・・
どうでしょうか・・・色合いのバランス的にはこちらの方がマッチしていますね。ニッケルメッキのレンズはブラックボディが良さそうです。
エルマー50mmF3.5(沈胴)と基本的には同じデザインですがヘリコイドに無限遠ストッパーは無く、最短距離1mから無限遠までほぼ1周360度回転のピントリングです。操作感はガタつき無くそこそこスムースなのですが、エルマーと比べるとどうも”しっとり感”に欠けた感触です。ガタつきを抑えるためでしょうか、ヘリコイドねじの溝に板バネが仕込まれており、ここのテンションがやや強すぎるような印象です。板バネは無くても十分ガタの無い精度で組み上げられているように感じるのですが、当時は加工精度にバラツキが多かったのかもしれませんね。
ノブ裏には0番の刻印が見られます。
絞り値の大陸目盛り[2.5 3.2 4.5 6.3 9 12.5 18]が特徴的ですね。鏡胴に年代なりのスレはありますが沈胴構造にガタはなくしっかりとした状態です。シリアルナンバーが刻印された前面のリング部もペイントが擦れて真鍮の地金が現れてきていますが、これも時代を感じさせてくれる一つのチャームポイントとなってしまうのが『オールドレンズ』ならではと言えます。
『ヘクトール』・・・レンズ設計者マックス・ベレクの愛犬の名前だそうです・・・愛犬の名前を自分が設計したレンズに付けるとは何とも微笑ましく羨ましいエピソードですが、そんな由来のレンズで我が家の愛犬を撮ってみました・・・
薄曇りの条件下でしたので極端なフレアを感じることはありませんでしたが、全体的に甘いですね。開放でも、数段絞り込んでもピントの山がつかみにくいという状態です。パッと見は大きなキズやひどい曇りも確認出来ない光学系なのですが、如何せん古いレンズですので製造当初の性能を期待するのは無理ということかもしれません。
シャープさよりも柔らかさや独特の雰囲気にこのレンズ特有の味を見つける・・・となるとやはりデジタルよりも銀塩で撮ってみたくなります・・・。
ヘクトール5cmF2.5(L)・・・カラー写真の雰囲気はどうでしょうか・・・
ヒメイワダレソウの”緑”がもう少し鮮やかに出そうな条件だと思うのですが、シャープネスの甘さ同様、発色に関してもやや渋めに再現されてしまうような印象です。
こういったシチュエーションではモノクロの方が雰囲気が出そうですね。
原色系でコントラストの効いた被写体だとそこそこ発色も良く見えますが、撮影中モニターにプレビューされる画を見ただけで『オールドレンズ』らしさを実感できるレンズです。