2015年4月28日火曜日

MIR-10A 28mm F3.5 (M39)


 フィルター径67mm、正面から見るとかなりのボリュームを感じさせてくれるのは・・・ロシアKMZ製【MIR-10A 28mm F3.5 (M39)】 ミール10Aです。1970年~の本レンズは、薄いシングルコートとシンプル過ぎるブラックの外観デザインから、見た目で興味をそそられる類いのレンズでは無いのかもしれません。ただそんな地味な印象の広角28mmですが、実際に触って撮ってみることで何か面白い要素が発見出来るのではという淡い期待を抱かせてしまう裏腹な雰囲気も持ち合わせており、無視して横を通りすぎるにはもったいない気がして手に取った1本です。


 ミール10AにはM42マウントの物も存在するようですが、こちらはM39(ゼニット)マウントのレンズとなる為、使用する際には[M39→M42]のステップアップリングを挿入し、M42用のマウントアダプターを使用することとなります。厳密に見るとM39(ゼニット)マウントとM42マウントではフランジバック量に若干の差があるようですが、アダプター自体の寸法誤差もある為、ミラーレスとの組み合わせならこれでほぼ問題無く使用可能です。


 約500gの重量級レンズという点からステップアップリングを介した装着は強度面で若干の不安もありましたが、実際に【α7 II】に着けた感触は特にガタツキもなく、普通に使用する分には問題なさそうです。ただ【α7 II】 とのコンビでは総重量1.2kgオーバーとなり、アダプターを含めるとかなり長くなるレンズ長は、広角28mmの単焦点を使っているというよりも望遠系のレンズを着けているかのような感覚に陥ってしまいます。
 ヘリコイドリングは重量級レンズならではの剛性を感じる造りで、ガタもない適度なトルク感があり、またプリセット絞り(真ん中の赤ドットが付いた部分がプリセット用リング)は慣れるとフォーカス操作時にとても使い勝手が良く、スムーズな撮影のために積極的に利用できる機能だと思います。


 写りに関してはWEB上での情報によると低コントラストであるというような解説も見られましたが、シャープネス、コントラスト共に予想以上にしっかりとしたレベルだと感じます。拡大してみると背景の周辺部に若干カラーフリンジと二線ボケの傾向があってもごくわずかで、ザワザワとうるさい印象はありません。


 最短20cmまで寄れるのでかなりのクローズアップを狙えるのも使い勝手の良いポイントです。


 また発色も自然で細部の解像感も不満ないレベルです。


  6枚構成の絞り羽根は星形で、この様なゴーストが現れる場合もあります。


 前回取り上げた【Leitz Hektor 2.8cm F6.3 (L)】はレンジファインダー用、今回の【MIR-10A 28mm F3.5 (M39)】は一眼レフ用とバックフォーカス量の大きく異なる2本ですが、同じ35mmフォーマット用の焦点距離28mmという括りで見ると同じ画角のレンズとなる訳で、この2本のサイズ&重量をあらためて見比べてみるととても興味深く、またこの様な2本を同じボディで気軽に撮り比べ出来るというのもミラーレス一眼ならではの面白さかと思います。

2015年4月7日火曜日

Leitz Hektor 2.8cm F6.3 (L)


 1935年製ライカLマウントの広角レンズ【Leitz Hektor 2.8cm F6.3(L)】 ・・・初期にはニッケルメッキのタイプや、戦後に製造されたものにはコーティングありのタイプ、最小絞りがF22というタイプ等いくつかのバージョンがあるヘクトール28mmです。


 なんと言っても特徴的なのはこの薄さで、エルマーの3.5cmよりも更に薄くコンパクトなレンズです。


 SONY α7 に付けるとその小ささがよく分かります。広角28mmの開放F6.3という暗いスペックのレンズですが、実際に使ってみるとピントの山が意外と掴みやすいというのが第一印象です。


 開放での周辺光量低下はかなり目立ちますが、中央部の描写をピクセル等倍で切り出してみると・・・


・・・とても繊細でシャープな写りが見て取れます。このキレの良さがピント合わせがし易い理由の一つかと思います。


 気になるほどの歪曲収差も見られず、コントラストもしっかりとした描写です。


 四隅を見ると同心円状に流れが出ています。

 
 ミラーレス一眼での使用を考えると、フルサイズとの組み合わせで広角28mmの画角と周辺光量の特徴を生かした作画を追求するのもよし、あえてAPS-Cやマイクロフォーサーズと組み合わせることで画面中央部の高い解像感を存分に味わうというのもありかもしれません。