2016年3月3日木曜日

KMZ RUSSAR 20mm F5.6 (L)


 周辺部の色かぶりや光量低下がはっきりと現れてしまった今回のレンズは、近年ロモグラフィー×ゼニット社が復刻版を発売して話題になった・・・


・・・ロシアンレンズのライカLマウント超広角系【KMZ RUSSAR 20mm F5.6 (L)】ルサールです。1958年に発表されて以降90年代まで製造が続き、後期には黒鏡胴タイプも存在しピントリングやフィルター枠の高さなど若干デザインに変更が加えられているようです。この個体はシルバー鏡胴でシリアルナンバーからすると最初期に製造された一本かと思われます。


 鏡胴部分は約15mmととても薄く、ボディに取り付けてしまうと所謂パンケーキ形状のレンズなのですが、フランジ面から後玉部が大きく張り出しているため、レンズ全長は約37mmあります。アルミ合金製で非常に軽く仕上がっていて重量は70g、ヘリコイドは適度なトルク感で軽量レンズの割にはなかなか良好な操作感です。絞りリングはORION-15(28mm)やJUPITER-12(35mm)と同様レンズ正面に設けられており、絞り操作がちょっと不自由なのは広角系ロシアンレンズのお約束と言えそうです。また49mmフィルターのネジが切られてはいるのですが、枠前端部(距離環)が張り出しているためネジ長の短い一般的なフィルターは装着出来ませんでした。黒鏡胴のモデルは前端までネジ切りされているようですので改善された点なのかも知れません。
 丸くポコンと収まっているビー玉の様な前後玉の形状が特徴的で、95度という広い画角を4群6枚の対象型レンズ構成で実現しているのが窺えます。コーティングは前後玉には施されていない一方、中玉部は薄いパープル系のコーティングがされているように見えます。

 フランジバックの短い広角系レンズを使うなら画素ピッチの大きな【SONY α7S】の方が相性が良いようですが、【SONY α7 II+RUSSAR】の組み合わせがどのような描写になったのか、以下試し撮り結果です。


 夕方陽が傾きかけた時間帯の空ですが周辺光量の低下が顕著です。ファインダーを覗いた印象としては、絞り開放であればフォーカスの変化は掴みやすく、ピント合わせもカチッと追い込むことが可能です。ただ周辺部にいくと像が流れている傾向があるのでフォーカスポイントは必然的に中央付近に置かれる構図になりそうです。


 こちらのカットも上半分が空ですので光量低下が目立つのに加え、マゼンタ色かぶりが短辺側と長辺側にも現れていますね。


 建物や木の枝などの細部を見ても十分な解像感が得られており、シャドー部も案外つぶれずに残っているという印象です。


 こんなカットだと周辺光量不足はほとんど気にならなくなりますが、明かり取り窓から差し込む光で天井部分にはややフレアっぽさを感じます。一方ゴールドに輝く時計部分のように高コントラストでエッジの効いた被写体はとてもシャープで質感をリアルに描き出してくれています。


 近接側で絞り開放のカットを見ると周辺部の像流れが若干目立っています。


 20mmという超広角レンズになると近景でも遠景でも水平垂直をしっかりと意識することに加え、被写体に対してのレンズの向きがきちんと正対しているかどうかが出来上がりの画に大きく影響してきます。ほんの少しレンズを上下左右に振ってみたり、半歩だけ自分が動いてみるだけでかなり変化しますので、超広角レンズの画角や特性を体に染みこませるためにショット数を重ね、面白い被写体に巡り会ったらじっくりと時間をかけて向き合ってみるとよいかもしれません。


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