旧ソ連製のカメラ・レンズにはその『製造工場を示すロゴマーク』が刻印されており、独特なデザインのマークはそれぞれに特徴があります。洗練されているとまでは言い難いのですが、ロシアンレンズを見ていく上での面白い要素の一つになっています。今回のレンズ【JUPITER-3 5cm F1.5 (L)】を見てみるると、正面の銘板に刻まれたマークは・・・
・・・「凸凹凸の貼り合わせレンズをモチーフとしたような」デザインで、ZOMZ(ザゴルスク光学機械工場)製であることを表しています。こちらのマークは1962年頃まで使用されていた前期バージョンで、それ以降のZOMZ製は下の後期バージョンに変化しているようです。
ちなみに【ジュピター3】は製造年代により工場が移っているとのことで、初期のKMZ(クラスノゴルスク機械工場)製や、黒鏡胴となった最後期のVALDAI(ジュピター・オプティクス)製なども存在するようです。
これら3工場のロゴに共通しているのが、「レンズやプリズムとそれを通る光軸」からデザインしたのだろうと思われる点で、光学機器の製造工場であることをシンプルに図案化し表現したということでしょうか。資本主義においてのロゴマークというのはブランド価値そのものであったりするわけですが、社会主義体制下ではこの『ブランド』という概念自体が不要であったのだろうと考えると、ロゴマークと言うよりもやはり『製造工場印』と言った方が適切なのかも知れません。
F1.5の大口径レンズですのでそこそこの重さを感じるかと思いきや、鏡胴がアルミ合金製ということもあってか重量は140gに抑えられています。軽量レンズならではのややチープな操作感はいかにもロシアンレンズといった印象で、気軽に使えるという点では色々なボディと組み合わせてガンガン撮るのに向いていると思います。
濃厚な色のりを見ると、曇天や雨天の元でも彩度の高い被写体が存在するシーンなどには雰囲気ある画が作れそうな気がしてきます。
近接側から開放での1カット。
2段程絞る(F2.8)と合焦部のシャープさが際立ってきます。
こちらもF2.8、画面左端部分にシェーディングが出ているように見える1カットです。
彩度の高い被写体ではとても濃厚な発色が得られ、開放から数段絞ったシャープな画質も予想以上にキレが感じられました。ただやはり開放付近でのしっとりと落ち着きある描写によってアンニュイな雰囲気を醸し出して・・・そんな画作りを目指したとき、この【JUPITER-3 5cm F1.5 (L)】は期待に応えてくれるかも知れません。
0 件のコメント:
コメントを投稿