焦点距離、開放F値も近いスペックの16mmシネカメラ用レンズの4本です。ウォーレンサックはアメリカ、サン・ベルティオはフランス、ケルンはスイス・・・と3国で製造された4本のレンズです。一本一本単体でも眺めて触って撮影して十分楽しめるのですが、似たようなスペックのレンズが手元に集まるとそれを色々と比較してみたくなるのが人情というものです。というわけで・・・
【WOLLENSAK CINE-VELOSTIGMAT 1inch F1.5】
【SOM BERTHIOT LYTAR 25mm F1.8】
【SOM BERTHIOT CINOR 25mm F1.8】
【KERN SWITAR 25mm F1.4 AR】
ボディはマイクロフォーサーズのPanasonic LUMIX GX1。画角の違いが分かるように撮影距離は固定とし、絞り優先モード、WBは色温度5000Kで固定、感度もISO160で固定、アスペクト比(4:3)のJPEG(元画像4592×3448ピクセル)です。発色の違いも分かりやすいように被写体は『花束』にしてみました。全画面に加え、ピント位置の中央部と、周辺部として画面左下を切り出して比較してみたいと思います。
それぞれのレンズが持っている”雰囲気”や”味”の違いが少しは見えてくるでしょうか?
まずは4本の画角と全体の雰囲気を見るために、最小絞りよりも1段開けた絞り値での比較です。
ウォーレンサックは1inch(=25.4mm)ですので他の3本よりも寄りの画角となっており、イメージサークルは広く周辺のケラレはほぼ無いといっていいレベルです。
ケルンはイメージサークルが小さく、中央部のシャープさに比べ周辺部の収差が大きく残った写りは特徴的です。
ベルティオの2本は写りに大きな差は無いのではと思っていたのですが、周囲のケラレ具合が随分違いますね。CINORの方はケラレが少ないのですが、柔らかい低コントラストの画になっています。一方LYTARの方はコントラストの効いた写りですが、4本の中で一番ケラレが大きいですね。ただケルンよりは周辺部の流れは少ないようで自然な印象を受けます。
オールドレンズですので個体差による写りの差は含まれていると思われますが、こうやって並べてみるととても面白いですね。
次に・・・絞り開放と、小絞りでどの程度画質が変化するのか、まずは画面中央部で比較してみたいと思います。(小絞りは最小絞りから一段開けた絞り値にて撮影)
ウォーレンサックとベルティオCINORの2本は絞り開放でのコントラスト低下が顕著に現れています。ベルティオLYTARも開放はやや甘い傾向ですが上記2本ほどではありません。一方ケルンは絞り開放から高コントラストでキレのある描写が見られ、f16まで絞るとすでに回折現象が現れてきているのか絞り開放よりも解像感が落ちています。
ウォーレンサックとベルティオLYTARは絞り込むことでコントラストも向上しシャープネスも増してきますが、ベルティオCINORは絞り込んでもシャドー部のしまりが甘い傾向です。レタッチすることを前提で、ローキー調のモノクロ写真でトーンを再現するのには逆に使いやすいレンズとなるかもしれません。
絞り値による写りの変化量が大きいのは昔のレンズならではの特徴で、この特性をあえて楽しむのもオールドレンズ遊びの醍醐味と言えそうです。
次は周辺部の写りについて比較です。まずは【WOLLENSAK CINE-VELOSTIGMAT 1inch F1.5】から・・・
絞り開放側での周辺光量低下がはっきりと現れています。今回の4本の中では絞り込むことでの画質変化が最も大きい一本です。
続いて【SOM BERTHIOT CINOR 25mm F1.8】は・・・
絞り開放側での周辺光量低下が前回の【WOLLENSAK CINE-VELOSTIGMAT】同様に見られます。絞り値による画質変化は比較的少ないですね。どの絞り値でも全体的にコントラストが低めの柔らかい描写が特徴のCINORです。
続いて【SOM BERTHIOT LYTAR 25mm F1.8】は・・・
同じベルティオのCINORに比べてイメージサークルが小さいのが分かります。こちらも絞り値による周辺部の画質変化は比較的少ないのですが、小絞り側でケラレが目立ちます。
最後に【KERN SWITAR 25mmF1.4 AR】は・・・
絞り値による(周辺部の)解像感の変化はあまり見られません。このスイターはイメージサークルは小さ目だけれども開放からキレのある描写が得られていると言えそうです。