2014年12月10日水曜日

SONY α7 II (ILCE-7M2)

 ちょうど去年の今頃だったでしょうか、フルサイズセンサー搭載のミラーレス一眼【SONY α7】を手に入れ、35mm判オールドレンズを本来の画角で使える様になったことに純粋な喜びを感じていたのを思い出します。振り返ってみるとこの一年間でα7のショット総数は7000強となり、そのほとんどがオールドレンズとのコンビでした。ビューファインダーがあって、マニュアルフォーカスアシストを使ってしっかりとピント合わせが出来、そしてフルサイズの画が得られる、機能的にはこれで十分満足しており、自ずとショット数も伸びてきていました。たまに「これで手ぶれ補正が付いていたらな」と頭を過ぎったこともありましたが、今までは所詮無い物ねだりだったわけです。ところが先日、α7の派生機として手ぶれ補正機能が搭載された【SONY α7 II 】が発売となりました。
 
 
 このモデルの目玉である手ぶれ補正の効果がどれ程実感出来るのかが一番の興味ですが、その他にもα7からα7 IIへの更新メリットがあるのか気になります。同じ2400万画素で画像処理エンジンも大きな変化は無さそう、オールドレンズを主に使うとなるとα7 IIへの乗り換えはコスト面から見ても興味は半々という方も多い気がします。


 実機を手に持って触ってみるとα7とはかなり雰囲気が異なります。まずボディの厚みが増して右手グリップ部分も高くなっていることでホールディング性は随分と良くなっています。α7は右手指先が窮屈に感じることもありましたが、このサイズ感であれば違和感なく操作可能です。カスタムボタン等の配置変更も操作性の改善と言えそうです。またアクセサリーシュー部分もメッキ仕上げから黒塗装に変更されており、アイカップラバーも若干大きくなっているようです。


 シャッターボタンの位置がトップカバー部からグリップ部に位置変更され、それに伴い前ダイヤルもグリップ上部前面に埋め込まれました。また起動時間が早くなっている点と、ボディ剛性の影響なのかシャッター音が若干静かになっているようにも感じます。


 α7では滑らかで光沢のある表面処理だったのが、α7IIではシボ加工が施されています。全体的に高級感が増しており、ボタン配置などやや難のあった部分も改善され、質感や操作性に関してはかなり好感触です。手ぶれ補正機構を内蔵した割にはボディ厚を抑えているという見方も出来そうですが、やはり分厚くなったボディや特徴的だったグリップ部分のデザインなどα7らしいデザイン要素は薄れてしまったようにも感じます。ただ質感は明らかに向上し、細かい操作性も改善しているα7 IIはα7よりも愛着を感じて長く使えそうな印象です。


 手ぶれ補正だけを期待してα7からα7 IIへ更新する事を考えると出費が大きいように感じますが、α7 II単体で見るとなかなか良い出来のボディではないかと思います。ただ3600万画素α7Rの手ぶれ補正機能付きバージョンも後に控えているかもと想像すると、買い時は迷ってしまいますね。

2014年11月30日日曜日

JUPITER-12 35mm F2.8 (L)

  
 
 以前に紹介した【JUPITER-8 5cm F2 (L)】ジュピター8も濃いコーティング色が印象的なレンズでしたが、今回の【JUPITER-12 35mm F2.8 (L)】ジュピター12もアンバー系とパープル系のコーティングが美しい1本です。コーティングに関しては製造年代によって変化が見られ、LZOS製'70年代後半の本レンズは比較的新しい部類のジュピター12ということになります。一方、古い世代はというと・・・
 
 
・・・右のクローム鏡胴がArsenal製’60年代初頭のモノで、コーティングはされていますが薄いパープル系モノコートのようです。新旧共に外観のデザインに大きな変わりは無く、鏡胴の内側に設けられた絞りリングの少し使いにくい操作感も同様です。レンズ銘が、古いクローム鏡胴の方はキリル文字表記(ЮПИТЕР‐12)であるのに対し、新しい黒鏡胴の方は英字表記(JUPITER-12)となっています。α7にはどちらを着けても似合いそうですが、黒ボディに黒鏡胴の組み合わせは違和感なく馴染んでしまいます。
 
 
 大胆に飛び出た分厚い後玉がこのレンズ最大の特徴ですが、取り扱いは要注意です。SONY α7への装着を考えた場合、フランジ面から後玉の頂点までが20mm強、Lマウントのフランジバックが28.8mmですので、シャッター幕のスペースを考慮すると奥行き方向の余裕はかなり小さいと言えます。更に後玉の最大径は約29mmあり、センサー周辺のシャッター部材等とのマージンも少なくぎりぎり装着出来ているという寸法関係になっていそうです。
 
 
 開放での一枚。若干周辺の光量低下は見られますが、色のりや中央部のシャープさはまずまずといった印象です。
 
 
 彫りが深く奥目のレンズなのですが光源の位置によってはフレアも出ますので、場合によってはフードを付けるかハレ切り対策も意識しておいた方がよいかもしれません。フィルター径は40.5mm、絞りリングにねじ込むことになるのでフードを付けると絞り操作がし易くなるのですが、手元にあった長さ16mmストレート形状のフードでは四隅がケラレてしまいました。
 
 
 F5.6辺りまで絞ると周辺光量も落ち着いてきます。


 少し絞り込んで風景写真などにもよいかもしれません。



2014年11月24日月曜日

Chiyoko Ⓒ SUPER ROKKOR 45mm F2.8 (L)

 
  これまでにも何回か取り上げたことがある千代田光学精工(ミノルタ)のライカLマウントレンズ【ChiyokoSUPER ROKKOR 45mm2.8(L) 】スーパーロッコール『梅鉢』です。独特なデザインのピントリングと高い剛性感の造りがとても魅力あるレンズですが、今回は手元にある前期型と後期型の2本を横に並べて比較してみたいと思います。
 
 
 右が前期型で左が後期型となります。前期型には無いピントレバーが後期型には設けられている点が外観上の大きな違いです。また前期型には正面の銘板に開けられた丸穴に絞り値が表示されるという機構がありますが、後期型ではこれが無くなっています。細かい違いですがレンズ銘などの文字サイズも若干異なります。真正面から見るとこの程度の違いに見えますが、少し斜めから見てみると・・・
 

  フィルター枠の深さが違うことが分かります。また前玉の押さえリング形状が異なり前期型は浅く細かなローレット加工が施され、19mmフィルターが装着可能なようにネジ切りされています。一方後期型はローレットではなくカニ目レンチ用の溝が切られ、すり鉢状の反射防止形状となっています。後期型でもシリアルナンバーの小さいものは19mmフィルター装着可能なタイプも存在しますので、すり鉢タイプのものは最後期モデルと言えるかもしれません。
 
[後期型]
 
 
 前後期共、全群回転ヘリコイドのためピントリングを回すとレンズの前半分は一体で動く形式です。ヘリコイドの回転角は半周の約180度ですので、後期型に設けられたレバーの方が楽にピント操作を行えるという点と、距離を固定したまま絞りリングを操作したい場合にピントレバーは役に立ちます。
 
[前期型]
 
 前期型絞り値表示の丸穴です。近距離側にピントを合わせていると絞りリングに刻まれた絞り値が真下の方に回ってしまうので、正面を覗けば絞り値が分かるこの機能は便利にも思えますが、ゴミが入りやすい等の理由から後期型では省かれたのではと想像されます。絞り値の確認が少しでもし易くなるようにとの配慮からか後期型では絞り値がリングの二カ所、180度対に刻まれています。
 
 
 マウント側を見てみると距離計連動カムの構造が異なることが分かります。前期型は直進タイプなのに対し、後期型はスクリュー式となっています。ヘリコイドを操作しながら見てみると前期型の方がカムの動きに若干ですが僅かな遊びが感じられます。これにより連動に誤差が出る程では無いと思いますが、後期型は改良されたと言える変更点かもしれません。
 
 最後に撮影サンプルです。まずは後期型の絞り開放です。
 
 前期型、一段絞ってF4です。
 
 

2014年11月3日月曜日

Kern-Paillard SWITAR 25mm F1.4 H16 RX (C)


 ビジフォーカス(オレンジ色の被写界深度マーカー)が機能的にも外観デザインの面でもとても優れたアクセントとして効いている、16mmシネカメラ用Cマウントレンズの【Kern-Paillard SWITAR 25mm F1.4 H16 RX】です。ケルンパイヤールならではの被写界深度表示機能ですが、以前に紹介した【SWITAR 25mm F1.4 AR (C) 】の様に白いラインのみというシンプルなものや、YVAR 16mm F2.8 AR (C)】の様にオレンジ色のドットが現れるタイプなど、いくつかのデザインが存在します。


 黒ペイントの鏡胴にカッパーオレンジ色のシャープなラインが浮かび上がる今回のスイター25mm RX は、数あるケルン製シネレンズの中でも最も目を惹く美しいデザインのレンズだと思います。


 コンパクトなシネレンズですが黒、オレンジ、シルバーの配色が強い存在感を放っていて、小振りな黒ボディのマイクロフォーサーズ機に合わせるとお似合いのコンビとなります。見た目の相性はバッチリと言えるLUMIX GX1に装着しどんな画が得られたのか、以下試し撮り結果です。


開放ではかなりハロが見られ甘い描写です。

 
 こちらは開放から2段絞ったF2.8ですが、周辺部はケラレと流れが出ているのに対し、画面中央部はかなりシャープな描写です。


中央と周辺の落差が更によく分かります。

 
 周辺部に現れる放射状の流れ具合は被写体や距離によっても変化し、画面中央に配置したターゲットにググッと視線を引き込んでくれる効果を持っています。
 同じケルン製Cマウントのスイター25mmでも【F1.5】【F1.4 AR】はケラレはあっても周辺の流れが比較的目立たない写りでしたが、今回のSWITAR 25mm F1.4 H16 RXは中央部と周辺部の落差がかなり目立つ描写と言えそうです。

2014年10月29日水曜日

Fish-eye-Takumar 18mm F11 (M42)


 前回に引き続き今回もM42マウントの超広角レンズ・・・【Fish-eye-Takumar 18mm F11 (M42)】フィッシュアイ・タクマーです。


 ヘリコイドは設けられていない固定焦点タイプで、リングは絞りのみ、外観デザインに特に目立つ特徴も無く、とにかく薄いレンズです。これほど『パンケーキ』という愛称がふさわしいレンズもなかなかありません。寸法は最大径が約58mm、最大長約20mm、フランジ面からレンズ先端までの長さは約12mmしかありません。M42マウントのフィルム一眼ボディに装着した場合はこの薄さが相当目立つと思われますが、ミラーレスのSONY α7に付けた場合・・・


・・・真正面から見ただけでは、直径の割に小さな瞳のレンズという印象だけですが・・・


・・・正面以外から見ると、アダプターの厚みがかなりあるので何だか普通の寸胴レンズに見えてきます。また18mmの画角とこのアダプター厚からすると内面反射等による影響が出やすい寸法関係になっていそうな気もします。

 
 とにかくレンズ単体ではとても薄いフィッシュアイ・タクマーですが、固定焦点であるという点とF11という明るさからして、実際の使用は日中の屋外で遠景を狙うというシーンに限定されてくるのかもしれません。 

 
 前回のミール20mmは歪曲のほとんど目立たない超広角でしたが、フィッシュアイ・タクマーはその名のとおり魚眼ならではの歪み具合です。遠景を狙ってもF11ではかなり甘さを感じる描写で、F32まで絞り込んでいくとそれなりにシャープになってきますが、周辺部は荒くエッジにはカラーフリンジが発生しています。また絞り込むことでレンズやセンサーに付着したゴミがしっかりと映り込んでしまう点も要注意です。
 

  近接側の撮影はフォーカスの限界に加え光量的にもちょっと厳しいですね。
 

  どの絞り値でも四隅にケラレが見られますが、もしかするとレンズの特性というよりもアダプターでケラレている可能性もありそうです。
 
 高精細でシャープな画質は期待出来なくても、魚眼ならではの歪曲を利用した構図と被写体を選んで、ブレや荒れの世界で楽しんでみるのも、フィッシュアイタクマーの生かし方としてはありかもしれません。

2014年10月26日日曜日

MIR-20M MC 20mm F3.5 (M42)


 七色に輝くコーティングの反射光を見ていると、レンズの奥に吸い込まれていきそうな感覚に陥る巨大な前玉の超広角レンズ【MIR-20M MC 20mmF3.5(M42)】ロシア・KMZ製のミール20mmです。
 このミール20mmというレンズは1970年代初頭には世に出ているようで、以前紹介したコーティングが施されていないタイプが前期型となります。今回のマルチコートMCタイプは後期型で、なんと近年まで製造が続いているとの事。1930~60年代ならまだしも、20~21世紀にまたがって40年以上に渡って同一のレンズ設計のまま生産されているという点は驚きです。

 
 前期型と後期型ではコーティングの有無だけでなく、鏡胴やリングのデザインも異なり、こちらの後期型は若干外径が小さくなっています。前期型はピントリング部の最大径が約90mmあったのに対し、後期型は約80mmと10mm程シュリンクされています。ただこの後期型はピントリングの造形が”ブルドーザーのキャタピラーの様”な、かなり厳ついデザインとなっていますので、見た目だけではこちらの方が重量級に見えるかもしれません。ところがリングやフード部分など樹脂製となっている部材も多く、質感や操作感に関しては総金属製である前期型の方に軍配が挙がりそうです。
 
 
 レンズ前面にフィルター枠が設けられていない点もこのミール20mmの特徴で、後玉側に付ける専用のフィルターが用意されています。枠は樹脂製でネジ径が約28mmの小さなフィルターですので、モノとしてはおまけ程度の品質です。これを実際に装着すると・・・
 
 
・・・この様にピッタリとはまります。ただネジ切りが浅いのでカメラ本体へ装着した後にフィルターだけ脱落してしまわないようしっかりと装着確認をしておく必要がありそうです。
 
 
 
 
 
 
 写りに関しては高いコントラストの描写が好印象で、ノンコートの前期型とは明らかに違いとして現れてくるポイントだと思います。ただ細部を見てみると繊細さはあまり感じられず、線がしっかりとした描写であるという特徴は前期型と同様です。
 引いてワイドに情景をとらえる広角本来のアングルから、最短18cmまでグッと寄ってのマクロ的撮影までこなし、歪曲も十分に抑えられている、そんな万能性を持つレンズが【MIR-20M MC 20mmF3.5(M42)】です。
 


2014年10月24日金曜日

Angenieux 1inch F0.95 (C)

 
 フランスのアンジェニューがアメリカ・映画機材製造の老舗であるベル&ハウエルに供給した16mmシネカメラ用Cマウントの大口径レンズ 【Angenieux  1inch F0.95 (C)】 です。フランス製のシネレンズと言えば以前にも紹介したサン・ベルチオ(LYTAR,CINOR)が味わい深い独特の描写を見せてくれるレンズでしたが、このアンジェニューもCマウント以外にALPA用やExakta用などのレンズが現在でも高い人気を得ています。
 
 
 開放F0.95という値は数あるCマウントレンズ群の中でも最も明るい部類で、そのスペックがいかなる描写を導き出してくれるのか、絞りリングとフード枠に刻まれた二カ所の "0.95" がオールドレンズファンの心を揺さぶります。また明るさだけでなく・・・
 
 
 アンバーとパープルの美しいコーティングが妖しく光を反射する様も、写りへの期待感を更に高めてくれます。『フランス製』,『アンジェニュー』,『F0.95』・・・とても興味をそそるキーワードからなるシネレンズの描写はどうなのか・・・イメージサークルのサイズを考えるとマイクロフォーサーズとのコンビがベストかと思いますが、まずはSONY α7でAPS-Cサイズにしたサンプル写真(絞り開放)です。
 

  最短撮影距離は約45cmですが、まだ20cm程余裕を残した位置からの1カットです。室内での撮影ということもあってかコントラストの低下はさほど感じられず、シネレンズとしてはすっきりとした描写です。開放での滲み具合についても、この様なシーンでは甘い滲みはほとんど感じられず、合焦部のシャープさの方が際立っています。ワンコの顔をピクセル等倍で切り出してみると・・・
 
 
 毛並みが細部まで描写されとてもリアルに再現されています。大胆なトリミングにも応えてくれそうな解像感です。
 屋外はマイクロフォーサーズのLUMIX GX1で試してみました。晴天の元での絞り開放となるとシャッター速度1/4000では露出オーバーになってしまうケースがほとんどです。ISO100以下の感度と1/8000のシャッターを搭載するボディであってもNDフィルターが必要となるかもしれません。
 

  デフォーカス部分に含まれるハイライトの滲みがかなり目立ちますね。
 

  極端なぐるぐるボケが現れやすい条件ですが、 【Taylor-Hobson COOKE KINIC 1inchF1.5 (C)】 等と比較すると収差の残り具合は大人しめといえます。
 

  前後左右に向かってなだらかにぼけていく様子はモノクロにすると際立ってきます。
 

  開放でのピント面の薄さはもっとシビアなのかなと予想していましたが、ファインダーの内蔵されていないLUMIX GX1でも何とか撮影をこなせそうなレベルです。
 

  シーンによっては盛大な滲みも現れる開放での撮影でしたが、合焦部のキレの良さはピカイチ、中心部だけ大胆に切り出したとしても十分鑑賞に堪える解像感が予想以上でした。シャープさと柔らかい甘さが同居し、これらが相乗効果によって印象的な画が生み出される、そんな不思議な感覚にさせてくれるのが【Angenieux 1inch F0.95(C)】でした。