2014年4月28日月曜日

ROBOT用レンズとフルサイズ(その2)

 前回のツァイス・イエナ製テッサー30mmは本来のイメージサークル(24mm×24mm)外である四隅に特徴的な流れや光量低下が現れていました。画面隅々まで均一でシャープな像が欲しい場合には[ROBOT+α7]の組み合わせはバツとなってしまいますが、周辺の流れや落ち込みを一つの効果として生かす事が出来ればとても面白いコンビになるかと思います。勿論この組み合わせでもAPS-Cサイズにクロップしたりトリミング前提で使用することも出来ますので、間口の広いα7でROBOTレンズの魅力にどっぷりとはまってしまうのも良いかもしれません。で、今回は・・・


 【Schneider-Kreuznach Xenon 40mmF1.9】シュナイダー・クロイツナッハ製クセノン40mmです。極薄パンケーキのテッサー30mmと比較するとこちらは厚みもあって操作性に優れた一本です。"O"が目玉の様なデザインで可愛らしいROBOTロゴがピントリングに刻まれており、被写界深度マークはこのレンズも[赤・黄・緑]で印されています。ピントリングも絞りリングも非常にスムーズな操作感でストレス無く撮影可能なのが特徴で、15枚の絞り羽根がどの絞り値でも綺麗に円形絞りを形作ります。開口径が大きめの前玉ですのでやはりフードは必須となりそうですが、フード枠になっている絞りリング部分にネジ山は切られていません。純正のフードはかぶせタイプのフードだったのか、内径側にバネ圧等で押さえるタイプだったのかちょっと気になります。
 ツァイス・イエナ製テッサー30mmも剛性感の高い造りとシャープな描写が好印象でしたが、こちらのクセノン40mmもシュナイダー製らしい高い質感の造りです。写りはどんな描写を見せてくれるのか・・・以下試し撮り結果です。


 開放から1段絞っての『鯉のぼり』です。周辺部が結構落ちていますが中央部はかなりシャープです。


 開放での『ワンコ』ですが、大口径らしい前後のボケも味わえます。四隅はテッサー30mmとほぼ同じような感じでしょうか、フルサイズではしっかりとケラレてしまいます・・・。


 開放から3段ほど絞って遠景を撮ると、とても高コントラストのシャープでキレの良い写りを実感できます。


 Lマウントのシュナイダー製クセノゴン35mmF2.8でも感じたことですが、こちらのクセノンもシャドー部のトーンが粘って細部の描写が繊細で解像感の高い描写が得られています。また開放から絞り込むことで多彩な描写変化を見せてくれるのもクセノンの魅力と言えるかもしれません。

2014年4月24日木曜日

ROBOT用レンズとフルサイズ


 ROBOT用レンズの【Carl Zeiss Jena Tessar 3cmF2.8】イエナ製テッサー30mmです。ハーフ判のオリンパスPEN-F用レンズをフルサイズで試したのに続いて、今回はROBOTカメラ用レンズとフルサイズの組み合わせです。『ROBOT』はスプリングを使った連続撮影可能なカメラとして1930年代に開発されたとてもユニークなカメラです。ゼンマイ機構による機械式ワインダーを本体に内蔵しているという、メカ好きにとってはそれだけで興味をそそられるカメラなのですが、レンズ自体もかなりの存在感を漂わせています。
 まず目に付くのはレンズ正面に刻まれた『ROBOT』のロゴです。連続撮影可能という特殊な機能から軍用にも供給されていたという背景からすると、このポップな印象のロゴに少しギャップを感じてしまいます。また被写界深度を示す指標が[赤・黄・緑]と3色のカラーで印されているのもポイントで、合理的だけれどちょっとしたおしゃれの様でもあり、パッと見の外観デザインを見ただけで惹かれてしまう、そんな類のオールドレンズと言えるかもしれません。
 この様に見た目だけからするとライトな感覚のレンズのように思えてくるテッサー30mmですが、実際に手に取ってみるとコンパクトで薄いパンケーキレンズの割に重量は約90gあり、かなり剛性感の高い造りとなっています。距離目盛り毎にクリックストップが設けられたピントリングと、レンズ正面に鋭角なローレット加工が施された絞りリングは共にガタの少ない良質な操作感ですので、実際に撮影する前から期待感も高まります。
 (24mm×24mm)スクエアフォーマットのROBOT判レンズとフルサイズの組み合わせはどんな相性なのか、以下試し撮り結果です・・・。


 ビビッドな発色とフォーカス部のシャープさに対し、画面上部左右にかなり流れが見られます。イメージサークルが小さめのCマウントシネレンズをマイクロフォーサーズと組み合わせた時の様な印象です。シャープな描写を見せてくれる中央部と周辺部の格差が激しく、四隅にかけて急激に像が流れ出しているように見られます。


 ロボット判(24mm×24mm)は概ね赤枠で示したエリアですのでしっかりとイメージエリアはカバー出来ていることが分かります。ちなみにAPS-Cでは白枠で示したエリアとなるのでROBOTレンズの中央部美味しいところだけを味わうにはAPS-Cサイズのミラーレス一眼はベストマッチと言えるかもしれません。


 フルサイズでは周辺にしっかりと光量不足が現れてきますが被写体によってはこれも一つの効果として十分楽しめると思います。

2014年4月14日月曜日

INDUSTAR-22 5cmF3.5 (L)


 沈胴式ライカLマウントの旧ソ連ロシア製レンズ【INDUSTAR-22 5cmF3.5(L)】インダスター22です。以前に【Panasonic LUMIX GX1】との組み合わせでご紹介しましたが、今回はフルサイズ【SONY α7】とのコンビです。ロシア製レンズば当たり外れがあってモノによってかなり性能が異なるとよく言われます。要するに製品のバラツキが大きいのだと思いますが、果たして今回のインダスター22は当たりなのか外れなのか、フルサイズ画面全域で確認出来るのでちょっと楽しみです・・・。


 やや逆光気味の条件で満開の桜をバックにワンコを手前に置いてみました。ほぼ絞り開放ですがピント面はとてもシャープで十分なキレを感じさせてくれます。ややワンコの色が偏っているように感じるのは、ホワイトバランスがオートですので背景の薄いピンクに引きずられた影響かもしれません。


 F5.6辺りまで絞ってのチューリップです。花びらの赤が一部完全に飽和していますが発色とコントラストはなかなか良好だと感じます。


 絞り開放での桜・・・50mmF3.5の割に被写界深度が浅く感じられます。花びら周辺にハロも無くキレの良いクリアな描写を見せてくれています。


 ”絞り開放では良好な描写を得られない”との評価もあるようなインダスター22ですが、この個体は『当たり』だったのか全体的にとてもシャープでクリアな写りになっていると感じます。太陽光が入射するような逆光では盛大にフレアやゴーストは出てきますが(それはそれで面白い画になるのですが)、半逆光程度であればフードを装着することでしっかりとコントラストの効いたキレのある描写となり色のり良い写りが得られていると思います。ただ一つ感じたのはコントラストが高いことで逆に繊細な線描写がやや劣っているのかなという点です。この点は赤エルマーや沈胴ズミクロンで『ワンコ』を撮った時に特に感じるのですが、毛並みの一本一本が自然なトーンで「艶」を感じるか感じないかの微妙な差となって現れてきます。今後、こんな解像度に対する印象も覆してくれる『大当たり』のインダスターに巡り会うことが出来るのでしょうか。製品のバラツキや個体の善し悪しがあることで期待と喜びが生まれる・・・オールドレンズに嵌ってしまうやっかいな(でも楽しい)ポイントでもありますね。

2014年4月8日火曜日

Bell & Howell LUMAX 1inch F1.9 (C)


 フルサイズミラーレス【SONY α7】にCマウントの16mmシネレンズはイメージサークルが小さすぎてミスマッチかもしれませんが、APS-Cサイズへのクロップ機能をオンにして【Bell&Howell LUMAX 1inchF1.9(C)】ルマックス1インチを試してみました。クロップすることで画像サイズは(3936×2624)の約1000万画素となりますので、最初から1600万画素クラスのAPS-C機やマイクロフォーサーズ機でクロップ無にて使用した方が解像度が高い画が得られるのですが、対応レンズの許容度が大きいα7でのシネレンズ使用はどんなものかを見てみようと思います。


 やはりAPS-Cサイズでは四隅が大きくケラレてしまいます。ちなみにマイクロフォーサーズ機では赤枠で示したエリアがイメージとなり、ごく僅か四隅がケラレる程度でカバー出来ていることが分かります。この様にイメージサークルの大きさだけを材料にすると「Cマウントシネレンズはマイクロフォーサーズで」という結論で落ち着いてしまいそうですが、実際の撮影時にはα7のファインダーの見やすさというのがとても有効だと実感しました。特にシネレンズの場合はこのサンプルを見ても分かるように中央フォーカス部分のシャープさと周辺の収差に特徴がありますので、見やすいファインダーで正確なピント合わせはとても気持ちよく撮影を進めることが出来ます。


 発色も鮮やかで・・・


 コントラストも高く・・・


 盛大に現れるグルグルぼけも味わえるシネレンズ・・・
 α7とのコンビはベストとは言えませんが、その魅力は十分引き出せるのではと思います・・・が、やはりCマウントシネレンズはマイクロフォーサーズ機、それも見やすいファインダー内蔵モデルが最適かもしれません。

2014年4月7日月曜日

ORION-15 28mm F6 (L)


 開放F値6.0の広角レンズ・・・ロシア製ライカLマウントの 【ORION-15 28mmF6(L)】 オリオン-15 28mmです。Lマウントの28mmといえば【Leitz HEKTOR 2.8cmF6.3(L)】ヘクトールがスペック的には近いわけですが、こちらのオリオン-15はアルミ鏡胴で重量も60g弱しかない軽量レンズですので、質感や操作感という点ではヘクトールと比較するのはちょっと無理がありそうです。ただこのオリオン-15も写りに関してはコントラストの高さやキレの良さ、歪曲の少なさなどなかなか評判は良さそうです。ヘクトール2.8cmは外観デザインと質感、操作感、そしてキレのある素晴らしい描写がさすがライツレンズという印象でしたが、そのヘクトールの写りに対しこのオリオン-15はどこまで迫っていけるのか楽しみです。早速試し撮りといきたいところですが、その前にレンズを正面から覗いてみると・・・

 これは絞り開放の状態(F6)なのですが、このように絞り羽根は全開となっていません。光学性能的にあえてF6という設定に抑えたという事なのでしょうか。これがもし絞り無しの全開放としたらどの様な描写になるのか?相当な周辺光量低下や盛大に収差が現れて全く画にならないのか?意外と面白い描写が生まれるんじゃないか?一度試しにやってみても面白いのでは?・・・などと考えてしまうのもロシアンレンズならではの面白味と言えるかもしれません。


 ファインダー(SONY α7)を覗いてまず気になったのがピントの山が分かりにくいという点です。28mmのワイドレンズで開放F6最短撮影距離が1mなのである程度は予想していましたが、フォーカスポイントを最大に拡大してピント調整してもピークの変化がとても小さくカチッと追い込めた実感がありません。画面中心でこの様な印象ですのでフォーカスポイントを周辺部に置いた場合には更に分かりにくくなります。こちらのサンプルはF11位に絞って手前の『菜の花』辺りにピントを置きました。ほぼパンフォーカスで周辺部の目立つ収差も見られず高コントラストで発色も自然な描写ですが解像感という点ではイマイチです。


 絞りF8辺りですが若干周辺光量の低下が見られます。


 もう少し渋い発色になるかと思いましたが意外と彩度の高い画になっています。


 こちらのカットも『桜』『鳥居』共にシャープな描写が得られています。
 全体的に色のりがしっかりとして高コントラストな描写が実感出来たオリオン-15ですが、どのカットの撮影時にもピントがきているか若干不安を残しながらの撮影でした。カチッと構図とピントを決めて細部まで詳細な描写を求める撮影の場合にはもう少し解像度が欲しいなという印象です。一方、高感度特性の上がった現代のデジカメでは暗いレンズでも十分使えることから、絞って常にパンフォーカスという撮影スタイルのスナップ写真には向いていると言えるかもしれません。

2014年4月1日火曜日

Wollensak VELOSTIGMAT 90mm F4.5 (L)

 
 アメリカ製ニューヨーク・ライツの銘が刻印されたライカLマウントのレンズは・・・


 以前に紹介した戦前型の黒鏡胴エルマーによく似た 【WOLLENSAK VELOSTIGMAT 90mmF4.5(L)】 ウォーレンサックのベロスチグマット90mmです。先端側レンズ部(フィルター枠)の形状が若干異なるという点と、絞りリングの形状とクロームメッキ処理となっている点が異なりますが、鏡胴部(ピントリングとマウント周り)は黒鏡胴エルマーとほぼ同じようです。レンズをウォーレンサック社が供給し、鏡胴部をライツ社が提供したという経緯がこれら相違点からも窺うことが出来ます。寸法や重量、リングの配置もエルマーとほぼ同じですので”操作性”に関しては同じレンズと言えるかもしれません。"光学性能"に関しては開放F値がエルマーはF4であるのに対し、このベロスチグマットはF4.5とスペック上に僅かな差がありますが、写りに大きな差は感じられないのではと想像していました・・・


 絞り開放からとてもシャープでコントラストが効いているという印象です。


 低コントラストでぼやけた印象になりがちな被写体でもとても素直で自然な描写を見せてくれます。

 
 シャドー部にしまりがあるので単純にモノクロ変換しただけでもしっかりとした白黒写真になります。またエルマーとの雰囲気の違いが一番現れているのが発色の違いと言えるかもしれません。ベロスチグマットはいかにもアメリカ製レンズらしい色のりの良さを感じます。光学系がクリアな状態を保っていることで高コントラストとなり、その結果色のりが良く感じるという事もあるかと思いますが、エルマーで感じられた薄いくすみの様な発色がベロスチグマットでは払拭されたような印象です。それぞれのレンズの特徴にあった画作りを追求することが出来るのはオールドレンズならではの楽しみですね。