2016年10月27日木曜日

HELIAR Vintage Line 50mm F3.5 (VM)

 カメラ雑誌をパラパラとめくっていると何とも魅力的なデザインをしたレンズの広告が目に飛び込んできました・・・コシナがフォクトレンダーブランドで展開しているライカMマウント互換/VMマウントシリーズのレンズ群から、『Vintage Line/ヴィンテージライン』の第3弾として発表されたヘリアー【HELIAR 50mm F3.5】です。


 黒い鏡胴部分にテーパーがついて先細りとなった形状が独特で、長さは異なりますがエルマーの105mm「マウンテンエルマー」をも連想させるデザインは、普段オールドレンズばかりに目が行っている人間を振り向かせるのに十分な力を秘めています。鏡胴側面にレンズ構成図をあしらうなど細かい芸もなかなか凝っていて、フードを付けた姿も美しく、白、黒どちらのボディに組み合わせてもよく似合いそうです。


 勿論、クラシカルテイストの外観だけでなく、描写性能に関しては現代の技術が盛り込まれている訳なので、クリアで色のり豊かで自然なボケも素晴らしい写りがサンプル画像から見てとれます。更にカタログに記述されている・・・
高い精度で加工・調整された総金属製ヘリコイドユニットと、適度なトルクを生み出す高品質グリースの採用により、滑らかな操作感覚のフォーカシングを実現。微妙なピント調整を可能にしています。
・・・という記述からも窺えるように、操作感を大事に設計製造されている点も大いに惹かれるポイントです。こんな事を言われるととにかく実物を触ってみたくなりますが、発売は11月とのこと。そこで重量と大きさが近いレンズはないだろうかと、手元にあるオールドレンズを探してみると、ズミタールがほぼ同じ209gでした。ズミタールを手にしながらヘリアーの画を眺めて、あぁこんな重量感なのかと想像し、期待する。もう既にメーカーの仕掛けた戦略にどっぷりと嵌まっているような気がします。

 このコンセプト・・・中には単なる懐古趣味だと捉える人もいるかも知れませんね。ただ個人的にはこのような単焦点のマニュアルフォーカスレンズは是非今後もラインナップを維持して欲しいと思いますし、第4、第5のヴィンテージラインにも期待をしてしまいます。メーカー価格が6.5万円、実売は税込5万円台のようです。決して安いレンズではありませんが、このコンセプトで販売本数を考えると、かなり頑張った価格設定のようにも思えてきます。お古レンズを2、3本整理してでもちょっと使ってみたい気になった一本です。

2016年10月26日水曜日

SOM BERTHIOT 50mm F3.5 (L改)


 フランス製ソンベルチオのライカマウントレンズを検索してみると、広角系のアンギュロール28mmF3.3や、標準ではアナスチグマット50mmF2.8、フロール50mmF2.8などが存在しているようです。しかしこれら3本は希少性もあってかなり高額なレンズですので、おいそれと手を出せるものではありません。ベルチオは以前にも紹介したシネレンズ(LYTAR、CINOR)の味わい深い描写がとても印象的だったので、フルサイズで試せるものがないか何か探していたところ今回のレンズに巡り会うことが出来ました。
 正面の銘板には【SOM BERTHIOT 50mmF3.5】の表記があるだけでレンズ名などは刻印されておらず、ロシア製Lマウントレンズから拝借してきたと思われるヘリコイド&マウント部に合体させた構造になっています。鏡胴部に"ROYER"のロゴが入っていることから、どうやらフランス製レンズシャッターカメラのサボワ・ロワイエから取り外したレンズだろうと推測されます。以前に紹介したローデンシュトック製レオマーと同じ類いの改造レンズというわけです。


 レンズシャッターカメラの固定レンズということもあってか、5枚構成の絞り羽根や絞りリングの動き、各パーツの仕上げ等はずいぶんとチープな印象です。外観や機構はさておき肝心のレンズの方ですが、コーティングは施されていて、パッと見はいい感じかなと思いつつ、中を覗いてみるとちょっと残念、前玉側と後玉側共に薄いクモリがしっかりと確認出来る状態でした。


 絞り開放、もろ逆光でのカットから。低コントラストなのはクモリの影響もしっかりと出ていると思いますが、滲み具合と色のりがベルチオらしいとでも言うのでしょうか、シネレンズ(LYTAR、CINOR)の描写とよく似ているように感じます。


 開放では周辺減光が見られ微かに紗がかかったような描写も、絞り込んでいくと普通の描写へと変化していきます。ただし中途半端に普通の描写を求めるよりも、このレンズならではの開放での滲みやボケ具合の面白さを積極的に楽しむ方がレンズの個性を生かすのかもしれません。


 大胆にホワイトバランスを外してみたり、


 周辺減光をあえて利用した露出設定をしてみたりすることで、アートフィルターや後処理では出せない空気感を味わうことが出来そうです。

2016年10月18日火曜日

Steinheil Orthostigmat VL 35mmF4.5 (L)


 シュタインハイル・ミュンヘン製ライカLマウントの【Steinheil Orthostigmat VL 35mmF4.5 (L)】オルソスチグマットです。シュタインハイルのロゴが型押しされた右上のケースはこのレンズ専用のケースで、上蓋の裏側に専用ファインダーが格納できる構造になっており、レンズ、ファインダーをセットで保管できるので重宝します。


 専用のビューファインダーは造りも良く、ライカIIIFに載せてもよくマッチしていて違和感が全くありません。見え具合がとてもクリアでかつ仕上げも美しいとあって、ファインダーだけでもその価値を堪能することが出来る一品と言えそうです。


 レンズ本体を見てみると特徴的なのがフォーカスリングに付いた2つのノブです。当時のレンズにはフォーカスノブが付いているものは多くありますが、2つのノブというのはちょっと珍しく、この形から「ミッキーマウス」と愛称が付いているようです。ローレット加工されている部分も見えますが、ここはマウント基部ですので、フォーカスの操作はこの2つのノブを手がかりに行うことになります。最初少し違和感を感じるのですが、ヘリコイドの回転角は半周の180度と比較的小さいので、慣れてしまえば問題ありません。絞りリングはレンズ前端のフィルター枠部分に設けられており、各絞り値毎にクリックストップがあるタイプです。




 この様なシーンだと画面下部のシャドー側が周辺減光と相まってすとんと落ちそうな気もしますが、しっかりとトーンが残っているという印象です。


 ピクセル等倍にしても十分な解像感が得られていて画面全域隅々までシャープでクリアな描写が窺えます。

2016年3月14日月曜日

ZOMZ ORION-15 28mm F6 (L)


 前回のルサールは周辺部の色かぶりと光量落ちが強烈に現れていました。やはりフルサイズデジタル(α7)と超広角レンズのコンビはちょっと癖があって、カラーで普通の描写を求めるにはやや使いにくいと言えそうです。そこで今回はもう少し画角の狭い広角レンズで同じLマウントの、【ZOMZ ORION-15 28mmF6 (L)】オリオン15で28mmレンズとの相性を見てみようと思います。


 以前に紹介した個体ではピントの山がちょっと分かり難いという印象を持ったのですが、今回の個体ではその様なことは全くなく、絞り開放であればしっかりとフォーカスのピークを掴むことが出来ました。これが実際に性能上の個体差からきたものなのか、それとも被写体が違うことや、もしくはヘリコイドのスムーズさ加減から体感的にそう感じてしまったのかは不明です。


 光量落ちが確認出来ますが最周辺部にも嫌な像流れなどは見られず、画面全域カチッとした描写となっています。


 ガラスウインドウ越しということもあってか全体的にはやや抜けが悪く感じる一枚です。テーブル上の小物など細部の描写や階調はしっかりと再現されているように見えます。


 絞りF11くらいに絞ればほぼパンフォーカスの状態に。


 ルサールのような極端な色かぶりも無く、十分な解像感と高いコントラストによって隅々まで気持ちよく見渡すことが出来ます。周辺部がこれくらい安定していればカラーでも問題無いですね。


 勿論、モノクロでも素直な階調とシャープな写りによって鮮鋭な描写が得られることが分かります。


 被写体を選ぶ時、どちらかというと画面内のターゲットにググッと引き込んでいくようなものよりも、アスペクト比を16:9などのワイドにして・・・、


画面全域をシャープに描き出し、周辺部の隅から隅までじっくりと観察してみたくなるような写真にとても相性が良いと言えそうです。


 ルサールの20mmだとちょっと画角が広すぎて画面の整理が難しかったりもしますが、オリオン15の28mmであれば構図も自然に決めやすく、少し絞っておくだけでキレの良い画が得られるのは被写体探しに集中できる大きなメリットとなります。軽量でかつコンパクトであるという特徴も生かして街歩きのお供におすすめの広角オールドレンズです。

2016年3月3日木曜日

KMZ RUSSAR 20mm F5.6 (L)


 周辺部の色かぶりや光量低下がはっきりと現れてしまった今回のレンズは、近年ロモグラフィー×ゼニット社が復刻版を発売して話題になった・・・


・・・ロシアンレンズのライカLマウント超広角系【KMZ RUSSAR 20mm F5.6 (L)】ルサールです。1958年に発表されて以降90年代まで製造が続き、後期には黒鏡胴タイプも存在しピントリングやフィルター枠の高さなど若干デザインに変更が加えられているようです。この個体はシルバー鏡胴でシリアルナンバーからすると最初期に製造された一本かと思われます。


 鏡胴部分は約15mmととても薄く、ボディに取り付けてしまうと所謂パンケーキ形状のレンズなのですが、フランジ面から後玉部が大きく張り出しているため、レンズ全長は約37mmあります。アルミ合金製で非常に軽く仕上がっていて重量は70g、ヘリコイドは適度なトルク感で軽量レンズの割にはなかなか良好な操作感です。絞りリングはORION-15(28mm)やJUPITER-12(35mm)と同様レンズ正面に設けられており、絞り操作がちょっと不自由なのは広角系ロシアンレンズのお約束と言えそうです。また49mmフィルターのネジが切られてはいるのですが、枠前端部(距離環)が張り出しているためネジ長の短い一般的なフィルターは装着出来ませんでした。黒鏡胴のモデルは前端までネジ切りされているようですので改善された点なのかも知れません。
 丸くポコンと収まっているビー玉の様な前後玉の形状が特徴的で、95度という広い画角を4群6枚の対象型レンズ構成で実現しているのが窺えます。コーティングは前後玉には施されていない一方、中玉部は薄いパープル系のコーティングがされているように見えます。

 フランジバックの短い広角系レンズを使うなら画素ピッチの大きな【SONY α7S】の方が相性が良いようですが、【SONY α7 II+RUSSAR】の組み合わせがどのような描写になったのか、以下試し撮り結果です。


 夕方陽が傾きかけた時間帯の空ですが周辺光量の低下が顕著です。ファインダーを覗いた印象としては、絞り開放であればフォーカスの変化は掴みやすく、ピント合わせもカチッと追い込むことが可能です。ただ周辺部にいくと像が流れている傾向があるのでフォーカスポイントは必然的に中央付近に置かれる構図になりそうです。


 こちらのカットも上半分が空ですので光量低下が目立つのに加え、マゼンタ色かぶりが短辺側と長辺側にも現れていますね。


 建物や木の枝などの細部を見ても十分な解像感が得られており、シャドー部も案外つぶれずに残っているという印象です。


 こんなカットだと周辺光量不足はほとんど気にならなくなりますが、明かり取り窓から差し込む光で天井部分にはややフレアっぽさを感じます。一方ゴールドに輝く時計部分のように高コントラストでエッジの効いた被写体はとてもシャープで質感をリアルに描き出してくれています。


 近接側で絞り開放のカットを見ると周辺部の像流れが若干目立っています。


 20mmという超広角レンズになると近景でも遠景でも水平垂直をしっかりと意識することに加え、被写体に対してのレンズの向きがきちんと正対しているかどうかが出来上がりの画に大きく影響してきます。ほんの少しレンズを上下左右に振ってみたり、半歩だけ自分が動いてみるだけでかなり変化しますので、超広角レンズの画角や特性を体に染みこませるためにショット数を重ね、面白い被写体に巡り会ったらじっくりと時間をかけて向き合ってみるとよいかもしれません。


2016年2月25日木曜日

FED 50mm F3.5 (L)

 オールドレンズの魅力・・・現代の高性能レンズでは味わえない特徴的な描写が得られたり、レンズ自体が持つ金属とガラスの質感に惹き寄せられたり、ヘリコイドや絞りを手動で操作しその感触を指先で楽しめる・・・等々、その理由は人それぞれでいくつも挙げられると思います。面白いのは利便性という現代の価値基準でこれら一つ一つを見ていくとほとんどが”不便な”ものなのですが、この”不便さ”をあえて楽しむことが出来るのがオールドレンズ遊びの醍醐味と言えそうです。そして何より数十年という長い時間経過の中で、その時々の様々なシーンをフィルム面に結像させてきたという歴史的ロマンまで抱かせてくれるのが、深い思い入れに繋がっていくのかもしれません。

 今回はオールドレンズを見ていく上で興味深い要素の一つであるコーティングに特徴がある一本・・・異様に青く、真っ青と言ってもいい程の濃いブルーコーティングが目立つロシアンレンズ 【FED 50mm F3.5(L)】 フェド50mmです。



 外観を見て分かるように基本的には沈胴エルマーのコピーレンズと言えるようです。レンズ構成も3群4枚のテッサー型で同様なのですが、絞りの位置がエルマーはレンズの1-2枚目間に置かれているのに対し、フェドは2-3枚目の間にあるという点です。(エルマーはテッサーの特許回避の為に絞りの位置を1-2枚目に配置したのに対し、フェドは元々のテッサーのレンズ構成通りに造られたということになるようです。)エルマーコピーレンズである東京光学製シムラー5cmF3.5(L)と比較してみると・・・


・・・絞り羽根の置かれている位置の違いが分かると思います。それにしてもこの2本が並ぶとコーティング濃度の差が一目瞭然ですね。シムラーもブルー系のモノコートが施されているのですが、このフェドと比べるとノンコートレンズに見えてきます。レンズ面での反射を減らし透過率を上げることがコーティングを施す目的の一つとされていますが、これだけ濃いブルーだとカラーバランスにかなり差が出てきそうな気もします。ちなみに撮影条件を固定(シャッター速度1/640、絞りF16、ISO100、ホワイトバランス固定、同フード装着、三脚使用)で両者を比較してみたところ・・・


・・・シムラーの方が青空の発色が実際の見た目に近く、フェドはブルーが落ち気味で若干黄色味がかった空色になってしまいました。またこのカットでは太陽光のフレアの出方にはっきりとした違いが見られ、フェドは随分と抑えられています。勿論全ての条件でフレアが抑えられるわけでもなく、太陽光など強い光源が画面内に入ってくると、角度によっては”青い点”となって現れるという特徴も見られます。


 絞り開放でのややザワ付いた印象になってしまう後ボケがいかにもエルマーらしいと言うか、F3.5クラスの描写と感じさせてくれる点で、


ベタな再現になりがちな高コントラスト&高彩度の被写体でも、固すぎない描写がかえって質感を与えてくれるように思えます。



 色のりも悪くなく、エルマーよりもコントラストが効いた描写が得られている感があり、すっきりとした背景の構図を選択するのが合っているのかも知れません。



 ピクセル等倍で見てしまうと細部の解像感に物足りなさを感じてしまいます・・・が、シャープネス、コントラスト、発色等々がバランスよくまとまっている点は好印象です。


 モノクロフィルム時代のレンズですのでコーティングがカラーバランスに与える影響を見てしまうのは微妙なところですね。ただ、あえてカラーで写りの特徴を探してみたりするのもオールドレンズの楽しみの一つになりそうです。

2016年2月4日木曜日

Carl Zeiss Jena Sonnar 5cm F2 (L) = JUPITER-8 ?

 カメラの世界にはコピーモデルと言われるものが数多く存在します。例えば1940~50年代にはバルナック型ライカを模したカメラが各国で数多く作られ、日本でもニッカ、レオタックス、タナック等々本物そっくりの『コピーライカ』がいくつも存在し、輸出用もしくは低価格の入門用としてある一定の役割を果たしていたと思われます。またカメラ本体だけではなくレンズについても同様で、例えば沈胴エルマー50mmF3.5のコピーレンズなんて一体どれ程の種類存在するのか?これをコレクションのテーマとしてみても十分な手応えを感じられるものになる可能性があり、『コピーもの』というのは旧いカメラ&レンズにおいて非常に面白いジャンルと言えるかもしれません。

 このように本家本元を模したものを自身のブランドや製品名で発売していた『コピー品』に対して、もうひとつ注目したいのが、中身は本家本元のコピーであるのに加え、ついでに銘板まで本物をそのまま刻印してしまった『フェイク品』のケースです。ここまでいくと本家に対するリスペクト等は消え失せてしまい、オリジナルの人気が高いことに乗じて生まれてきた贋作という位置づけになります。偽物を流通させて当時商売としてどれ程の利益が出たのか知る由もありませんが、ちょっと怪しげな経緯は色々な妄想をかき立てるという点でも興味深いものがあります。そこで今回は・・・フェイク品が多く存在するといわれているゾナー【Carl Zeiss Jena Sonnar 5cm F2(L)】を取り上げてみたいと思います。


 『フェイクゾナー50mmF2』の元レンズとなっているのは『コピーゾナー』であるロシア製ジュピター8ということですので、以前『GLIONミュージアム』のクラシックカーを撮影したライカLマウントの個体【KMZ JUPITER-8 5cm F2 (L)】と並べて比較してみたいと思います。



 外観を見ると鏡胴の長さが若干異なりますが、リングのローレットや、距離目盛り、絞り値の指標が似ていて、距離単位メートルの"M"も大文字になっています。またジュピター8はアルミ合金の鏡胴で軽量に仕上がっていて実測すると124g、一方のゾナーも後玉側マウント周りを見ても分かるようにほぼ同じ造りで重量も全く同じ値の124gでした。またヘリコイドのトルク感もややチープな感触で、指に感じるローレット加工や絞りリングのガタも触り馴れたロシアンレンズのそれに限りなく近いものです。


 WEB上での情報によると、銘板の文字や鏡胴の数字、赤▲マークの大きさ等もフェイク品の判断要素になるようで、この個体を見ても文字書体とピッチがツァイスらしい繊細な感じではありません。(この個体同士の比較ではピントノブの有無に違いがありますが、ジュピター8もノブ付きのタイプが存在します。)次にコーティングの様子を見てみると、


 ジュピター8はブルー系モノコートであるのに対し、ゾナーはアンバー系パープル系も施されていて時代的に新しい雰囲気が漂っています。(ジュピター自体が年代の異なる個体を見ても分かるように、様々なコーティングタイプが存在しています。)

 以上、いくつかの要素を見てきましたが、どうやらこの個体はJUPITER-8の本体から銘板だけを”Carl Zeiss Jena Sonnar”に付け替えた『改造フェイクゾナー』である可能性が高いと言えそうです。いずれにしてもこの様な品が存在したという事自体が、ある意味旧き佳き時代の象徴でもあり、偽物だからと無視するのはちょっと勿体ないので、将来へ残していくべきレンズ遺産の一つに加えてもいいのではないでしょうか。


 ジュピター8の描写に関しては以前のクラシックカー撮影で好印象を得ているので、このコーティング違いのフェイクゾナーでも期待度は高くなります・・・


 F5.6辺りに絞るとシャープさが画面全域で得られ階調も自然に再現されることからスッキリとした描写になります。


 遠景の描写も細部までクリアで解像感も十分高いレベルに感じます。


 近接側、細部も繊細な描写が味わえます。


 このような逆光条件でもコーティングの効果なのかコントラストも保ったまましっかりとトーンが再現されている点が好印象です。

 今回、『フェイク品』というオールドレンズの楽しみ方の幅広さを感じたわけですが、最後にふと気になったのは「銘板に刻まれたシリアルナンバーは連番になっていたのだろうか?」という点です。きっと『フェイクゾナー』もある程度の本数が同時に量産されたのではと推測されますが、銘板のシリアルナンバーを個々に変えるということまでしていたのか?それとも同じ番号の銘板を沢山作ってシリアルナンバーまで同じクローンが多く存在するのか?・・・なんだか妙に気になります。