2015年5月19日火曜日

ニッコールQ・C 13.5cm F3.5 (L)

 
 クロームに輝く長身のレンズはライカLマウントの【NIKKOR-Q・C 13.5cm F3.5(L)】、専用のフードにもヘアライン処理が施され手にした瞬間に質の高さを実感出来る1本です。
 
 
 Lマウント等レンジファインダー用の135mmレンズは当時から使用頻度が高くなかった為か、また人気が薄くあまり多くの人の手を経ていないこともあってか、現在でも状態の良い固体が多いような気がします。このレンズも(赤文字Cが表す)コーティングが随分と綺麗な状態で、外観のクロームにもほとんど傷みが見られず、1950年代のレンズにしては程度良好な部類かと思います。
 
 
 マウント側から覗いて見ると内面反射防止のために鏡胴の内側に植毛紙が丁寧に貼られているのが確認出来ます。一般的には黒い墨塗装が施されているものがほとんどで、これが劣化により剥がれたりするわけですが、このレンズの植毛紙は60年以上経過した現代でもしっかりとその機能を維持してくれています。この他にも鏡胴に設けられた三脚座や、リングに細かく刻まれたローレット、絞り値や距離の刻印に至るまでどれも手を抜かず丁寧に作り込まれており、戦後間もない頃、ニコンが世界に羽ばたこうとする時代の真面目なモノづくりが垣間見えてきます。
 
 
 【SONY α7 II】のファインダーを覗いてピント合わせをしてみると、合焦部の解像がとてもしっかりとしていて、シビアなピント合わせが欲しいショットではミラーレス一眼との相性の良さを実感することが出来ます。開放からシャープで背景のボケも柔らかく自然な発色の描写は、オールドレンズというよりも現代的な写りと言ってもよさそうなくらいです。
 
 
 合焦部の一部分をピクセル等倍で切り出してみると・・・、
 
 
・・・ワンコの毛並みや花びらの質感までクリアに再現されていることが見て取れます。階調表現も素直ですので・・・、
 
 
・・・モノクロでのポートレートなどにも生かすことが出来るかもしれません。
 
 
 レンジファインダー機では残念ながらあまり陽の当たらなかった『135mmレンズ』ですが、ミラーレス一眼との組み合わせならフレーミングやピント合わせも快適となり、更に【SONY α 7 II】なら手振れ補正効果も期待できるとあって、積極的に使ってみたいレンズの候補に挙がってくると思います。なんと言っても広角系のレンズに比べてかなりリーズナブルに入手可能であるという点が大きなポイントでもあります。中古カメラ店をじっくり覗いて見たら、棚の奥にひっそりと埋もれている格安極上のレンジファインダー機用望遠系レンズに巡り会えるかも知れません。

2015年5月8日金曜日

JUPITER-3 5cm F1.5 (L)

 
 旧ソ連製のカメラ・レンズにはその『製造工場を示すロゴマーク』が刻印されており、独特なデザインのマークはそれぞれに特徴があります。洗練されているとまでは言い難いのですが、ロシアンレンズを見ていく上での面白い要素の一つになっています。今回のレンズ【JUPITER-3 5cm F1.5 (L)】を見てみるると、正面の銘板に刻まれたマークは・・・
・・・「凸凹凸の貼り合わせレンズをモチーフとしたような」デザインで、ZOMZ(ザゴルスク光学機械工場)製であることを表しています。こちらのマークは1962年頃まで使用されていた前期バージョンで、それ以降のZOMZ製は下の後期バージョンに変化しているようです。
 ちなみに【ジュピター3】は製造年代により工場が移っているとのことで、初期のKMZ(クラスノゴルスク機械工場)製や、黒鏡胴となった最後期のVALDAI(ジュピター・オプティクス)製なども存在するようです。
 これら3工場のロゴに共通しているのが、「レンズやプリズムとそれを通る光軸」からデザインしたのだろうと思われる点で、光学機器の製造工場であることをシンプルに図案化し表現したということでしょうか。資本主義においてのロゴマークというのはブランド価値そのものであったりするわけですが、社会主義体制下ではこの『ブランド』という概念自体が不要であったのだろうと考えると、ロゴマークと言うよりもやはり『製造工場印』と言った方が適切なのかも知れません。
 
 
 F1.5の大口径レンズですのでそこそこの重さを感じるかと思いきや、鏡胴がアルミ合金製ということもあってか重量は140gに抑えられています。軽量レンズならではのややチープな操作感はいかにもロシアンレンズといった印象で、気軽に使えるという点では色々なボディと組み合わせてガンガン撮るのに向いていると思います。

 濃厚な色のりを見ると、曇天や雨天の元でも彩度の高い被写体が存在するシーンなどには雰囲気ある画が作れそうな気がしてきます。
 
 近接側から開放での1カット。
 
 2段程絞る(F2.8)と合焦部のシャープさが際立ってきます。

 こちらもF2.8、画面左端部分にシェーディングが出ているように見える1カットです。
 

  彩度の高い被写体ではとても濃厚な発色が得られ、開放から数段絞ったシャープな画質も予想以上にキレが感じられました。ただやはり開放付近でのしっとりと落ち着きある描写によってアンニュイな雰囲気を醸し出して・・・そんな画作りを目指したとき、この【JUPITER-3 5cm F1.5 (L)】は期待に応えてくれるかも知れません。

2015年5月2日土曜日

Carl Zeiss Jena Turret Finder 436/70


 ライカIIIfのアクセサリーシューに載っているのは、1938年~カール・ツァイス・イエナ製のターレット・ファインダー【436/70】です。「ライカにはライツ純正アクセサリーを合わせなければならない」という正統派ライカ道の方からするとちょっと邪道な組み合わせかもしれません。確かに前面のエッジの効いたクローム部分等を見ると直線的なCONTAXに合いそうなデザインとなっており、ライカには以前に紹介した【VIOOH】の方がお似合いなのは当然です・・・。残念ながら手元にCONTAXが無いという事情もあってこのIIIfに装着してみたわけですが、どうでしょうか・・・コンパクトなバルナック型ライカも一気に迫力が増し自己主張が強く前面に出て、外付けファインダーとしての機能性だけでなく、撮影時の気分までも高めてくれるという特殊な性質を持ったアクセサリーに思えてきます。


 焦点距離は28mm、35mm、50mm、85mm、135mmの5種類に対応しており、


前面のクローム部分に細かくローレットが刻まれたリングを回転させると、各焦点距離毎にクリックポイントが設けられており、∞位置で停止します。


 パララックスはクリックポイントのある∞位置から更にリングを僅かに回転させ微調整することで補正します。目安として撮影距離1m(28、35、50mm)の指標が刻まれています。(※85mmは撮影距離2mと1mに、135mmは撮影距離3mと1.5mの指標。)

 
 実際のファインダー像は縦横中心に十字のラインが引かれているだけのシンプルな構成で、見え具合もとてもすっきりとクリアなのが印象的です。
 
 
 視野枠が可変する【VIOOH】よりも【436/70】はターレット式ですのでかなり見やすく、実用的にも十分使える外付けファインダーだと言えそうです。またカメラに装着しなくてもファインダー単体で持ち歩き、撮影前に被写体の構図や画角の確認用という使い方としても生かすことが出来るかもしれません。