2014年11月30日日曜日

JUPITER-12 35mm F2.8 (L)

  
 
 以前に紹介した【JUPITER-8 5cm F2 (L)】ジュピター8も濃いコーティング色が印象的なレンズでしたが、今回の【JUPITER-12 35mm F2.8 (L)】ジュピター12もアンバー系とパープル系のコーティングが美しい1本です。コーティングに関しては製造年代によって変化が見られ、LZOS製'70年代後半の本レンズは比較的新しい部類のジュピター12ということになります。一方、古い世代はというと・・・
 
 
・・・右のクローム鏡胴がArsenal製’60年代初頭のモノで、コーティングはされていますが薄いパープル系モノコートのようです。新旧共に外観のデザインに大きな変わりは無く、鏡胴の内側に設けられた絞りリングの少し使いにくい操作感も同様です。レンズ銘が、古いクローム鏡胴の方はキリル文字表記(ЮПИТЕР‐12)であるのに対し、新しい黒鏡胴の方は英字表記(JUPITER-12)となっています。α7にはどちらを着けても似合いそうですが、黒ボディに黒鏡胴の組み合わせは違和感なく馴染んでしまいます。
 
 
 大胆に飛び出た分厚い後玉がこのレンズ最大の特徴ですが、取り扱いは要注意です。SONY α7への装着を考えた場合、フランジ面から後玉の頂点までが20mm強、Lマウントのフランジバックが28.8mmですので、シャッター幕のスペースを考慮すると奥行き方向の余裕はかなり小さいと言えます。更に後玉の最大径は約29mmあり、センサー周辺のシャッター部材等とのマージンも少なくぎりぎり装着出来ているという寸法関係になっていそうです。
 
 
 開放での一枚。若干周辺の光量低下は見られますが、色のりや中央部のシャープさはまずまずといった印象です。
 
 
 彫りが深く奥目のレンズなのですが光源の位置によってはフレアも出ますので、場合によってはフードを付けるかハレ切り対策も意識しておいた方がよいかもしれません。フィルター径は40.5mm、絞りリングにねじ込むことになるのでフードを付けると絞り操作がし易くなるのですが、手元にあった長さ16mmストレート形状のフードでは四隅がケラレてしまいました。
 
 
 F5.6辺りまで絞ると周辺光量も落ち着いてきます。


 少し絞り込んで風景写真などにもよいかもしれません。



2014年11月24日月曜日

Chiyoko Ⓒ SUPER ROKKOR 45mm F2.8 (L)

 
  これまでにも何回か取り上げたことがある千代田光学精工(ミノルタ)のライカLマウントレンズ【ChiyokoSUPER ROKKOR 45mm2.8(L) 】スーパーロッコール『梅鉢』です。独特なデザインのピントリングと高い剛性感の造りがとても魅力あるレンズですが、今回は手元にある前期型と後期型の2本を横に並べて比較してみたいと思います。
 
 
 右が前期型で左が後期型となります。前期型には無いピントレバーが後期型には設けられている点が外観上の大きな違いです。また前期型には正面の銘板に開けられた丸穴に絞り値が表示されるという機構がありますが、後期型ではこれが無くなっています。細かい違いですがレンズ銘などの文字サイズも若干異なります。真正面から見るとこの程度の違いに見えますが、少し斜めから見てみると・・・
 

  フィルター枠の深さが違うことが分かります。また前玉の押さえリング形状が異なり前期型は浅く細かなローレット加工が施され、19mmフィルターが装着可能なようにネジ切りされています。一方後期型はローレットではなくカニ目レンチ用の溝が切られ、すり鉢状の反射防止形状となっています。後期型でもシリアルナンバーの小さいものは19mmフィルター装着可能なタイプも存在しますので、すり鉢タイプのものは最後期モデルと言えるかもしれません。
 
[後期型]
 
 
 前後期共、全群回転ヘリコイドのためピントリングを回すとレンズの前半分は一体で動く形式です。ヘリコイドの回転角は半周の約180度ですので、後期型に設けられたレバーの方が楽にピント操作を行えるという点と、距離を固定したまま絞りリングを操作したい場合にピントレバーは役に立ちます。
 
[前期型]
 
 前期型絞り値表示の丸穴です。近距離側にピントを合わせていると絞りリングに刻まれた絞り値が真下の方に回ってしまうので、正面を覗けば絞り値が分かるこの機能は便利にも思えますが、ゴミが入りやすい等の理由から後期型では省かれたのではと想像されます。絞り値の確認が少しでもし易くなるようにとの配慮からか後期型では絞り値がリングの二カ所、180度対に刻まれています。
 
 
 マウント側を見てみると距離計連動カムの構造が異なることが分かります。前期型は直進タイプなのに対し、後期型はスクリュー式となっています。ヘリコイドを操作しながら見てみると前期型の方がカムの動きに若干ですが僅かな遊びが感じられます。これにより連動に誤差が出る程では無いと思いますが、後期型は改良されたと言える変更点かもしれません。
 
 最後に撮影サンプルです。まずは後期型の絞り開放です。
 
 前期型、一段絞ってF4です。
 
 

2014年11月3日月曜日

Kern-Paillard SWITAR 25mm F1.4 H16 RX (C)


 ビジフォーカス(オレンジ色の被写界深度マーカー)が機能的にも外観デザインの面でもとても優れたアクセントとして効いている、16mmシネカメラ用Cマウントレンズの【Kern-Paillard SWITAR 25mm F1.4 H16 RX】です。ケルンパイヤールならではの被写界深度表示機能ですが、以前に紹介した【SWITAR 25mm F1.4 AR (C) 】の様に白いラインのみというシンプルなものや、YVAR 16mm F2.8 AR (C)】の様にオレンジ色のドットが現れるタイプなど、いくつかのデザインが存在します。


 黒ペイントの鏡胴にカッパーオレンジ色のシャープなラインが浮かび上がる今回のスイター25mm RX は、数あるケルン製シネレンズの中でも最も目を惹く美しいデザインのレンズだと思います。


 コンパクトなシネレンズですが黒、オレンジ、シルバーの配色が強い存在感を放っていて、小振りな黒ボディのマイクロフォーサーズ機に合わせるとお似合いのコンビとなります。見た目の相性はバッチリと言えるLUMIX GX1に装着しどんな画が得られたのか、以下試し撮り結果です。


開放ではかなりハロが見られ甘い描写です。

 
 こちらは開放から2段絞ったF2.8ですが、周辺部はケラレと流れが出ているのに対し、画面中央部はかなりシャープな描写です。


中央と周辺の落差が更によく分かります。

 
 周辺部に現れる放射状の流れ具合は被写体や距離によっても変化し、画面中央に配置したターゲットにググッと視線を引き込んでくれる効果を持っています。
 同じケルン製Cマウントのスイター25mmでも【F1.5】【F1.4 AR】はケラレはあっても周辺の流れが比較的目立たない写りでしたが、今回のSWITAR 25mm F1.4 H16 RXは中央部と周辺部の落差がかなり目立つ描写と言えそうです。