2014年5月4日日曜日

Wニッコール・C 2.8cmF3.5(L)


 1950年代『日本光学工業』時代のライカLマウント用ニッコールレンズ【W-NIKKOR・C 2.8cmF3.5(L)】Wニッコール28mmです。製造から60年以上経過した現在でも全く色褪せない丁寧な作り込みが見てとれる一本です。クロームメッキの仕上げや、レンズ銘ほか各種指標の刻印、ピント及び絞りリングの操作感、無限遠ロックのかかり具合等々・・・レンズ単体に触れて眺めて、この一本から生まれる描写を想像するだけで、十分に至福の一時を過ごすことが出来る・・・ちょっと大げさですがそんな魅力に溢れ、日本カメラ産業が躍進し始める時代の価値あるレンズと言えるかもしれません。
 ヘクトール2.8cmF6.3より二段ほど明るく操作性も優れており、当時特殊だった広角レンズを身近にした一本ではないのかと想像されます。製造本数はそれほど多くなかったのか中古市場でよく見かける部類のレンズではなさそうです。
 今後このレンズはどれだけの光を通し写真を残していくのか?過去このレンズが写してきたフィルムの枚数と、デジタルとのコンビネーションで記録された画像ファイルの数はどちらが多いのか?被写体に向き合いシャッターを押す緊張感はデジタル時代になって明らかに低下してしまい、撮影枚数はフィルム時代の比ではないレベルに増加しています。別の見方をすると無駄で駄目なショットを数多く量産しているとも言えるわけですが・・・(笑)
 ミラーレス一眼との組み合わせでオールドレンズに陽が当たり、もう既にフィルム時代に撮影された枚数よりもデジタル撮影で使われた枚数の方が超えてしまっているというレンズ個体も数多くあるのではと想像されます。フィルムでもデジタルでも、どんな撮り方であったにしてもモノとして使うことでその価値が代々受け継がれていく事に変わりはなく、写真文化がこの先どんな形で展開していくのか興味は尽きません
 デジタルになった事で後処理で遊べるというのはフィルム時代にはなかった楽しみ方です。本来であればWニッコール2.8cmの描写をストレートに味わうのがよいのでしょうが、今回はちょっといじってみたサンプル画像を・・・
 

 

 フィルムや印画紙そして薬品類が次々と生産終了になり、いつまで銀塩写真の環境が残っていけるのか不透明な状況ですが、レンズ資産はデジタル時代でもしっかりとその存在価値を示していける・・・そんな想いを抱かせてくれた【W-NIKKOR・C 2.8cmF3.5(L)】でした。