2016年3月14日月曜日

ZOMZ ORION-15 28mm F6 (L)


 前回のルサールは周辺部の色かぶりと光量落ちが強烈に現れていました。やはりフルサイズデジタル(α7)と超広角レンズのコンビはちょっと癖があって、カラーで普通の描写を求めるにはやや使いにくいと言えそうです。そこで今回はもう少し画角の狭い広角レンズで同じLマウントの、【ZOMZ ORION-15 28mmF6 (L)】オリオン15で28mmレンズとの相性を見てみようと思います。


 以前に紹介した個体ではピントの山がちょっと分かり難いという印象を持ったのですが、今回の個体ではその様なことは全くなく、絞り開放であればしっかりとフォーカスのピークを掴むことが出来ました。これが実際に性能上の個体差からきたものなのか、それとも被写体が違うことや、もしくはヘリコイドのスムーズさ加減から体感的にそう感じてしまったのかは不明です。


 光量落ちが確認出来ますが最周辺部にも嫌な像流れなどは見られず、画面全域カチッとした描写となっています。


 ガラスウインドウ越しということもあってか全体的にはやや抜けが悪く感じる一枚です。テーブル上の小物など細部の描写や階調はしっかりと再現されているように見えます。


 絞りF11くらいに絞ればほぼパンフォーカスの状態に。


 ルサールのような極端な色かぶりも無く、十分な解像感と高いコントラストによって隅々まで気持ちよく見渡すことが出来ます。周辺部がこれくらい安定していればカラーでも問題無いですね。


 勿論、モノクロでも素直な階調とシャープな写りによって鮮鋭な描写が得られることが分かります。


 被写体を選ぶ時、どちらかというと画面内のターゲットにググッと引き込んでいくようなものよりも、アスペクト比を16:9などのワイドにして・・・、


画面全域をシャープに描き出し、周辺部の隅から隅までじっくりと観察してみたくなるような写真にとても相性が良いと言えそうです。


 ルサールの20mmだとちょっと画角が広すぎて画面の整理が難しかったりもしますが、オリオン15の28mmであれば構図も自然に決めやすく、少し絞っておくだけでキレの良い画が得られるのは被写体探しに集中できる大きなメリットとなります。軽量でかつコンパクトであるという特徴も生かして街歩きのお供におすすめの広角オールドレンズです。

2016年3月3日木曜日

KMZ RUSSAR 20mm F5.6 (L)


 周辺部の色かぶりや光量低下がはっきりと現れてしまった今回のレンズは、近年ロモグラフィー×ゼニット社が復刻版を発売して話題になった・・・


・・・ロシアンレンズのライカLマウント超広角系【KMZ RUSSAR 20mm F5.6 (L)】ルサールです。1958年に発表されて以降90年代まで製造が続き、後期には黒鏡胴タイプも存在しピントリングやフィルター枠の高さなど若干デザインに変更が加えられているようです。この個体はシルバー鏡胴でシリアルナンバーからすると最初期に製造された一本かと思われます。


 鏡胴部分は約15mmととても薄く、ボディに取り付けてしまうと所謂パンケーキ形状のレンズなのですが、フランジ面から後玉部が大きく張り出しているため、レンズ全長は約37mmあります。アルミ合金製で非常に軽く仕上がっていて重量は70g、ヘリコイドは適度なトルク感で軽量レンズの割にはなかなか良好な操作感です。絞りリングはORION-15(28mm)やJUPITER-12(35mm)と同様レンズ正面に設けられており、絞り操作がちょっと不自由なのは広角系ロシアンレンズのお約束と言えそうです。また49mmフィルターのネジが切られてはいるのですが、枠前端部(距離環)が張り出しているためネジ長の短い一般的なフィルターは装着出来ませんでした。黒鏡胴のモデルは前端までネジ切りされているようですので改善された点なのかも知れません。
 丸くポコンと収まっているビー玉の様な前後玉の形状が特徴的で、95度という広い画角を4群6枚の対象型レンズ構成で実現しているのが窺えます。コーティングは前後玉には施されていない一方、中玉部は薄いパープル系のコーティングがされているように見えます。

 フランジバックの短い広角系レンズを使うなら画素ピッチの大きな【SONY α7S】の方が相性が良いようですが、【SONY α7 II+RUSSAR】の組み合わせがどのような描写になったのか、以下試し撮り結果です。


 夕方陽が傾きかけた時間帯の空ですが周辺光量の低下が顕著です。ファインダーを覗いた印象としては、絞り開放であればフォーカスの変化は掴みやすく、ピント合わせもカチッと追い込むことが可能です。ただ周辺部にいくと像が流れている傾向があるのでフォーカスポイントは必然的に中央付近に置かれる構図になりそうです。


 こちらのカットも上半分が空ですので光量低下が目立つのに加え、マゼンタ色かぶりが短辺側と長辺側にも現れていますね。


 建物や木の枝などの細部を見ても十分な解像感が得られており、シャドー部も案外つぶれずに残っているという印象です。


 こんなカットだと周辺光量不足はほとんど気にならなくなりますが、明かり取り窓から差し込む光で天井部分にはややフレアっぽさを感じます。一方ゴールドに輝く時計部分のように高コントラストでエッジの効いた被写体はとてもシャープで質感をリアルに描き出してくれています。


 近接側で絞り開放のカットを見ると周辺部の像流れが若干目立っています。


 20mmという超広角レンズになると近景でも遠景でも水平垂直をしっかりと意識することに加え、被写体に対してのレンズの向きがきちんと正対しているかどうかが出来上がりの画に大きく影響してきます。ほんの少しレンズを上下左右に振ってみたり、半歩だけ自分が動いてみるだけでかなり変化しますので、超広角レンズの画角や特性を体に染みこませるためにショット数を重ね、面白い被写体に巡り会ったらじっくりと時間をかけて向き合ってみるとよいかもしれません。