2014年10月22日水曜日

Leitz Hektor 5cm F2.5 (L)


 沈胴エルマー5cmF3.5が画角的にもスペック的にも価格面でも当時の『スタンダードレンズ』とするなら、一段明るいこのヘクトール 【Leitz Hektor 5cm F2.5 (L)】 は大口径の高速ハイスペックレンズという位置付けで1930~31年に世に出たようです。しかし登場から2年後にはさらに半段明るいズマール5cmF2が発売され、高速レンズのポジションを明け渡してしまうという短い運命でした。そのため製造本数も少なく現代となってはやや珍しい部類に入るレンズです。
 この個体はニッケルメッキで半周回転タイプのヘリコイドを持つモデルですが、以前に紹介した無限遠ロックのない全周回転型モデルやクロームメッキのものなど、いくつかのバージョンがあるようです。


 黄色味がかった渋い光を放つこのニッケルメッキは何とも言えない独特の味わいがあって、いかにもオールドレンズという雰囲気を醸し出しています。


 当時のパンフレットを見ると「エルマーが開放から鮮鋭な描写であるのに対し、ヘクトールは若干劣る」との記述もあり、明るさを求めた結果、開放でのシャープさが損なわれたという認識は最初からあったようです。更には「数段絞ることによりエルマー同様優れた万能性を発揮」や「エルマーよりも二倍の明るさを持っているため、光量が不足している条件で大きな価値を持ってくる」という記述はハイスピードレンズの要求に応えようとするレンズであったことを伺わせます。一方で「人物や風景写真において上品にして魅力ある独自の画を作る」といった評価は正に今、このヘクトールを使ってみたいという肝の部分を的確に表していて面白いですね。
 では開放と数段絞った時の描写がどれ程違うのか 【SONY α7 + Hektor 5cmF2.5】 で見てみましょう。
 
 『止まれ標識』の右上角辺りをピント位置にしたのですが、シャープさの変化よりもまず開放での周辺光量不足がかなり目立ちます。数段絞る(絞り値指標は6.3~9の間で約F8位)と画面全域で光量は均一となります。
 
 この画像は上がオリジナル画像ですが、黒のしまりがない描写になっています。そこでシャドー側を補正したものが下の画像です。この2画像のヒストグラム(輝度データ)を見てみると・・・
 
 オリジナル画像(上)はシャドー側(0~18位)のデータが全く存在していないことが分かります。数値で見ると18以下のデータが無いので、約7%の階調がロスしているという見方も出来ます。ただこれが逆に本レンズの味に繋がっているという事も言えるわけで、特にモノクロ写真では黒つぶれしてしまうよりは、これくらいシャドー側が浮いている方が暗部の階調を後処理で再現させることが出来るという見方もあります。また色に関しては上サンプル写真の工事用三角コーンを見ても分かるようにかなり彩度の低い描写が特徴のヘクトールです。
 この様な特性を生かしながらいかに「上品にして魅力ある独自の画」にするか、被写体をじっくりと吟味して撮影と後処理を楽しみたいのが【Leitz Hektor 5cm F2.5 (L)】です。
 
 

2014年10月13日月曜日

ContaflexⅠ with Steritar

 3回続けてステレオカメラでしたので少し目先を変えて、今回はツァイス・イコン製一眼レフの最初期モデルである【Contaflex I】コンタフレックスI型を紹介します。レンズはツァイス・イエナ製テッサー45mmF2.8、シャッターはシンクロコンパー、露出計は無し、直線的でシンメトリカルな構成がとてもシンプルで好感の持てるデザインです。コンパクトなサイズ感で670g、巻き上げがノブ式ですのでちょっとまどろっこしいところがありますが、なんと言ってもファインダーがとても明るく見やすいのでピント合わせも快適で、当時としては相当使いやすい1台だったのではないかと思われます。
・・・と、コンタフレックス本体の話はここまでで、実は今回も・・・


・・・ステレオカメラとしてこのコンタフレックスを取り上げた次第です。その理由は、【STERITAR】ステリターというステレオアダプターが純正で用意されていたという点にあります。PENTAXや他のメーカーでも同じような商品がありますが、年代からして35mm判1コマをハーフ判に分割してステレオ写真とする最初の製品だったのではないかと推測されます。


 ミラーで構成された(上写真左)ステレオアダプターはスクリューマウントになっているので、まず(上写真右)マウントアダプターに付ける必要があります。マウントアダプターには真下の位置にロックピンが付いていて、最後までねじ込み回していくとパチンと位置が決まるという構造です。
 マウントアダプターにセットした状態で、カメラ本体のレンズ基部に切ってある溝に下側から滑り込ませていくと左右2カ所のラッチがかかり固定されます。それぞれのパーツはしっかりとした造りですので、これで概ねレンズセンターへの位置決めは出来ているようです。


 実際に装着すると、この様な感じでレンズ前面にアダプターが固定され単眼から複眼に変わるという訳です。通常の1コマのフレーム内に左右2コマを分離して写すという原理ですので、画角は本来の45mmレンズからは狭くなります。また像が左右に分割されるので、ファインダー中央にあるスプリットイメージは使えなくなり、中央に黒い縦線も入ってしまいます。


 色々な制約も出てくるレンズ前面配置アダプター方式でのステレオカメラですが、見た目の奇抜さであったり、単純にモノとしての面白さであったり、そして立体写真システムとしての機能そのものと、様々な側面から楽しめる一品が、【Contaflex I】と【STERITAR】なのではと思います。

 ここまで4回連続でステレオカメラを紹介してきましたが、どれも1950年代の個性的な機種ばかりです。これ以外にも数多くのステレオカメラがあって到底網羅することは不可能なのですが、過去のカメラ史を振り返る上で一つの大きなジャンルであり、外装デザイン的にも機能デザインとしても『カメラのデザイン』を考える上で非常に興味深い一群なのではと思います。またこれらカメラに触れていると、当時の立体写真に対する人々の『熱』が伝わってくるようで、少し普段と違う視点からちょっと変わったカメラに触れてみるのもいいものだなと感じた数日間でした。

2014年10月11日土曜日

Wirgin STEREO

 ステレオカメラが続きます・・・今回は 【Wirgin STEREO】 ドイツ・ヴィルジン社製ステレオカメラです。1950年代~エディクサ・シリーズを製造していたヴィルジン社で、このステレオカメラも海外のサイトなど見ると『Edixa STEREO』と紹介しているところをよく見かけます。ただ、このカメラは最初期の最もシンプルなⅠ型モデルで、ボディ本体に『Edixa』の表記はどこにも見あたりません。


 とてもシンプルなデザインで、カメラ正面にある大きな文字はファインダー対物レンズ左にある『STEREO』のロゴがほんの浅く刻まれているのみです。1950年代のステレオ・カメラを見ると撮影レンズの間のスペースに、ファインダーレンズが配置されていたり、メーカー名やカメラシリーズのロゴを置いているものが多いのですが、このカメラは貼り革で埋めているだけなので何か物足りなさを感じてしまいます。
 無駄なものをそぎ落とすという機能優先の思想が強かったのかもしれませんが、どうにも素っ気なく見えてきます。そこで、もし半分に切ってしまうとどうなるのか試してみると・・・


 どうでしょうか?・・・ディティールはさておき、意外にもこんなカメラなら実際に存在しそうと思えてきませんか?これならカメラのデザインとしての納得感が出てきます。”クロームと黒”という古典的な配色に加え、カメラデザインに対する固定観念がそう思わせるのかもしれません。
 横長に間延びしたシンプルすぎるデザインのヴィルジン製ステレオカメラですが、操作面に関してはとても使いやすい一台です。


 巻き上げがレバー式で、巻き上げ時にシャッターチャージも行われ、距離計は内蔵されていませんがファインダーは背面中央の上部に設けられておりクリアでとても見やすいものです。シャッターレリーズ、ピントレバー類の配置も適切なポジションで、フィルムカウンターや距離指標窓も小さめですが分かりやすいレイアウトとなっています。


 背面ど真ん中に『GERMANY』の型押しが入っています。


 レンズはシュタインハイル・ミュンヘン製カッサー35mmF3.5、最小絞りがF16で、シャッター速度はB、1/25、1/75、1/200というシンプルな機構の【Wirgin STEREO】です。

2014年10月10日金曜日

Stereo Realist

 前回のコダック・ステレオ・カメラに引き続き、今回もステレオカメラです。


 リアリスト判(23mm×24mm)のルーツであるアメリカ・デビッドホワイト社製の【Stereo Realist】ステレオ・リアリストです。
 コダック・ステレオカメラは色や細部のデザインがアメリカらしい1950年代のテイストが感じられるものでしたが、こちらのステレオ・リアリストはやや色気に欠け無骨な印象です。梨地仕上げのクローム部分に黒のグッタペルカという、アメリカ製というよりもドイツ的質実剛健さを感じるデザインで、重さも820g以上ある重量級です。
 古典的な仕上げの外装ですが、跳ね上げ式のレンズカバーに刻まれた”STEREO Realist”のロゴは『2枚の写真(2つのレンズ)から立体写真をイメージさせる』とてもスタイリッシュで洗練されたデザインだと思います。

 
レンズは35mmF3.5”DAVID WHITE ANASTIGMAT”アナスチグマット、美しいコーティングが施されています。


 トップの各操作部もシンプルな構成です。シャッターボタン右下に見える赤丸は、巻き上げてコマ送りすると白となりますがシャッターを切ると赤になることで、二重露光防止用のインジケーターとなっています。シャッターのチャージは巻き上げコマ送りとは連動していないため、カメラ正面下部にあるレバーを毎回操作することとなります。


 背面の下部にファインダー窓が2つあります。右側が距離計で上下像を合致させるタイプです。


 フォーカス用ダイアルは右側面にあるのですが、(1枚目写真で分かるように)距離計の対物レンズが前面の下部左右端に設けられているため、注意しないとすぐ指で隠してしまます。
 フレーミング~ピント調整~露出決定~絞り設定~シャッター速度設定~フィルム巻き上げ~シャッターチャージ~シャッターレリーズというマニュアル撮影の流れを一つ一つじっくりと味わいながら立体写真を楽しむのにはうってつけのカメラが【Stereo Realist】と言えそうです。

2014年10月9日木曜日

Kodak STEREO Camera

 今まで全く興味が無かったり特に関心も持っていなかったのに、ふとあるタイミングから急に気になりだして妙に意識してしまう事があります。自ら意図的に探し当てたわけでもないのに、自分の持っているゾーンに向こうの方から自然と入り込んできた様な感覚、そんな感覚でやってきたのが今回の一品・・・アメリカ・コダック製の【Kodak STEREO Camera】ステレオカメラです。


 チョコレートブラウンのカラーや正面のロゴがいかにも1950年代のアメリカンテイストを漂わせていて、半世紀以上経過した今でもデザインが”生きて”います。距離計が無いため高さが抑えられていることで横長のワイドボディがステレオカメラらしさを強調しています。また中央に設けられたファインダーレンズ下部には水準器が置かれ、この緑色も正面から見た際のデザインのアクセントとして効いています。
 このステレオカメラ、実際に手に取るまではチープでトイカメラ風な構造なのかと想像していたのですが、重さは700g以上あってとても重量感に溢れた造りとなっています。ステレオカメラの同時2コマ撮影というフォーマットを考えると、フィルムの平坦性やレンズ取り付け精度のためにしっかりとしたシャーシーが必要であるという点と、左右レンズのフォーカス、絞り、シャッター機構を連動させる事を考えると重くなって当然なのかもしれません。


トップカバーとボトムカバーのピンストライプも外観デザインを引き締めるポイントとなっていてアンティークな雰囲気を醸し出しています。
 

 レンズはアナストン35mmF3.5、距離計はなく目測測距で最短撮影距離は1.2m、シャッター速度はB、1/25、1/50、1/100、1/200、絞りはF3.5~F22というスペックです。巻き上げノブを回しコマ送りと同時にシャッターチャージされるので、撮影手順はシンプルで使いやすいと言えそうです。135フィルムを使用し、23mm×24mmのリアリスト判フォーマットですので現代でも十分に実用可能な【Kodak STEREO Camera】です。

2014年9月16日火曜日

Meyer-Optik Gorlitz Domiplan 50mm F2.8 (M42)


 マイヤー・オプティック・ゲルリッツ製M42マウントの【Domiplan 50mmF2.8(M42)】ドミプランです。最短撮影距離は0.75mとあまり近接側に寄れない部類のレンズです。そこで・・・


 マクロチューブを介して・・・


 ・・・寄ってみました。レンズが顔の前に来るのを嫌がっていたワンコですが、次第に慣れてきたのか?疲れてきたのか?鼻先の数cmまで近づいて撮った1カットです。


 マクロチューブを外して最短撮影距離での1カットです。絞り開放ではレトロな雰囲気で、特に画面周辺部はゆるい描写です。

2014年9月9日火曜日

Universal Finder ”VIOOH"


 エルンスト・ライツ・ウェッツラーのロゴが刻まれたバルナック~M型時代のアクセサリー”外付けファインダー”【VIOOH(Immarect)】です。35mmから135mmまで対応できるユニバーサルファインダーですので、これ一つで28mm以下の超広角レンズ以外は主要なライツレンズがほぼカバーできていたと言えそうです。焦点距離の設定リングは3.5cm、5cm、8.5cm、9cm、13.5cmにクリックポイントが設けられており、ライツ製らしい剛性感もしっかりと味わえる一品です。ただ倍率は一定のまま視野枠が可変するユニバーサルファインダーですので、ズームファインダーと比べると望遠側での狭い視野はどうしても見辛さを感じてしまいます。
 
 
 小振りなバルナック型でもバランスの良さが分かる【Leica IIIf + Elmar 3.5cmF3.5 + VIOOH】という組み合わせ。撮影用レンズ(エルマー3.5cm)に、カメラ内のファインダーレンズと距離計レンズ×2、そして外付けのファインダーレンズという計5つの目が被写体に向かうこのセット、デザイン的にも機能的にもなかなか格好よいですね。
 

 当時の外付けファインダーを見るとパララックス補正用レバーが付いているものも多いようで、このVIOOHにも設けられています。ただ実際にこのレバーを操作してフレーミングを正確に追い込む作業をどれだけ必要としたのか?とも思ってしまいます。一方、外付けのファインダーでパララックス補正を行おうという思想は、カメラ本体のファインダーブロックやアクセサリーシューの取り付け位置と角度に対してそれだけ誤差が小さく精度が出せているという自信があったということなのでしょう。実際のところどうだったのか当時使用していた方に聞いてみたいですね。